日本語で「上場投資信託」と訳される「ETF(Exchange Traded Funds)」。少額で手軽に分散投資ができるETFは、投資初心者が投資先に検討したい金融商品の1つです。
一方、ETFの興味はありつつも基本的な知識に自信が持てず、投資をためらっている方もいることでしょう。
そこでこの記事では、ETFの特徴や投資信託との違いなど、ETF投資をする前にこれだけは押さえておきたいポイントを解説します。具体的なETFの銘柄にも触れているので、銘柄選びの参考として役立ててください。
この記事の監修者
新井智美
金融のプロ
マネーコンサルタントとしての個人向け相談、NISA・iDeCoをはじめとした運用にまつわるセミナー講師のほか、金融メディアへの執筆および監修に携わっている。現在年間500本以上の執筆・監修をこなしており、これまでの執筆・監修実績は2,500本を超える。
(保有資格)
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
・CFP®
・DC(確定拠出年金)プランナー
・住宅ローンアドバイザー
・証券外務員
https://marron-financial.com/
ETFの3つの特徴とは?
最初にETFの理解を深めるために、ETFの3つの特徴を見ていきましょう。て
投資初心者でも始めやすい
ETFの中には、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)、NYダウなど、投資未経験者でも一度は聞いたことのある、有名な株価指数の連動を目指すものもあります。それら指数の動向は、ニュースでも度々報道されるため、投資初心者でも値動きを把握しやすいでしょう。
また、ETF投資にあたっては、トヨタ自動車や ソニーグループなど個別株に投資を行う個別株投資と異なり、企業を詳しく分析する必要はありません。ETFであれば、大まかな経済動向をもとに投資銘柄を選定しても、一定のリターンを得られる可能性は十分あります。
銘柄の選定という観点からもETFは、投資初心者でも始めやすい金融商品だといえるでしょう。
幅広い資産・銘柄で構成されている
ETFはさまざまな種類の資産・銘柄で構成され、、225銘柄の日経平均株価の連動を目指すETFは、同指数の225銘柄が組み入れられています。つまり投資家は、日経平均株価に連動を目指すETFを1つ保有するだけで、日経平均株価を構成する全225銘柄に投資するのと同じ分散効果を受け取れます(分散投資のメリットについて、詳しくは「分散投資ができる」の項で解説)。ちなみに、幅広い資産・銘柄で1つの商品が構成されている点は投資信託も同様です。
市場に上場している
ETFは市場に上場しているため、非上場の通常の投資信託と異なり、市場が開いている間は価格がリアルタイムで変動する特徴があります(ETFと投資信託の違いについては、「ETFは投資信託とどう違う?」の項でも詳しく解説)。なお、投資家にとっては、価格の推移をリアルタイムで確認しながら、より自身の狙った価格で売買することができるというメリットにつながります。
ETFの仕組み
ETF投資をする際に仕組みまで詳しく押さえる必要はないでしょう。
ただ、よりETFにもっと詳しくなりたいという方に向けて、ETFの主な運用方法である現物拠出型ETFとリンク債型ETFの仕組みについて解説します。
現物拠出型ETF
現物拠出型ETFとは、証券会社や機関投資家など指定参加者が市場で買い付けた現物株バスケット(現物株の集合)と、それをもとに運用会社が設定したETFとを交換する仕組みになります。なお、逆に証券会社や機関投資家などは保有しているETFと現物株バスケットとを交換することも可能です。
リンク債型ETF
リンク債型ETFでは、証券会社や機関投資家など指定参加者が運用会社へ金銭を拠出し、ETFが設定されます。拠出された金銭はリンク債(=特定の指数等に連動してリターンも変動する債券)に投資され、結果的にETFとリンク債の価格が連動するようになるのがリンク債型ETFの仕組みです。
ETFの種類
東京証券取引所に上場しているETFは、連動を目指す対象ごとに以下の5種類に区分されいます。
資産 | 連動対象 |
株式 | 国内・海外株式 |
債券 | 国内・海外債券 |
不動産 | J-REIT・海外REIT |
コモディティ | コモディティ(商品) |
国内・海外株式
ETFには、日経平均株価やTOPIXなど国内の株価指数に連動を目指すものFや、NYダウ・S&P500といった米国を含む海外の株価指数に連動を目指すものがあります。
前者は日経平均株価やTOPIXといった有名な指数だけでなく、時価総額・流動性の高い30銘柄で算出される株価指数「トピックス・コア30」に連動を目指すETFや、最近話題のESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンス/企業統治)に着目した株価指数「SolactiveジャパンESGコア指数」と連動を目指すETFなどもあり、非常に多彩です。
また、後者Fには、米国だけでなく、中国やブラジル、インドなど新興国の株価指数を対象としたETFもあります。成長力のある新興国に投資をしたい方にとっては有力な選択肢になるでしょう。
国内・海外債券
国内外の国債や投資適格社債などで構成される債券指数との連動を目指すETFです。基本的に債券は株式よりも値動きが緩やかで、また両者の値動きは反対になる傾向があります。そのため、株式だけでなく国内・海外債券のETFも保有することで、より高い分散効果を狙うことができます。
REIT・海外REIT
REIT(リート)とは、投資家から集めた資金で不動産に投資を行い、得られた収益を投資家に分配する不動産投資信託のことです。REITに分散投資をしているETFを「REIT ETF」であり、米国を含む海外の取引所に上場しているREIT ETFを「海外REIT ETF」と呼びます。
REIT ETF・海外REIT ETFは安定した分配金・高い利回りが期待できる点が特徴です。また、不動産投資に興味がある方にとって2つのETFは、不動産投資の第一歩になるかもしれません。
コモディティ(商品)
原油や金、プラチナ、穀物などコモディティ(商品)の価格に連動を目指すETFもあります。コモディティは一般的にインフレに強いとされており(インフレ時に基準価額が上昇する傾向にある)、株式や債券の値動きとの相関性も低いため、リスクヘッジ先としても有効です。そのほか、原油やプラチナなど実物投資が難しいコモディティにも手軽に投資ができる点も、このETFの魅力といえるでしょう。
ただし、分配金が発生せず、価格変動リスクが大きい(=価格の振れ幅が大きい)ケースがあることなどは、投資前によく認識しておきましょう。
ETFは投資信託とどう違う?
ETFと投資信託の違いをまとめてみました。
ETF | 投資信託 | |
上場の有無 | 上場 | 非上場 |
価格 | リアルタイムで変動 | 1日1回、基準価額が算出される |
種類 | 299銘柄(2023年10月現在) | 5,954本(2023年9月末時点) |
必要な資金 | 数千円~ | 100円~ |
コスト | 売買手数料:販売会社により異なる 運用管理費用(信託報酬):一般的に投資信託の方が高い |
ETFと投資信託、どちらが始めやすいかは人によります。たとえば、ある程度銘柄が絞られたほうが選びやすいという方は、ETFから始めやすいといえるでしょう。また、最初はできる限り投資資金を低く抑えたい方は、100円からお手軽に投資を始められる投資信託のほうが魅力的に感じるかもしれません。
とはいえ、ETFも数千円という少額で始められます。まずETFと投資信託の両方を少額から始め、様子を見ながら適切なものを選んでみてもよいでしょう。
ETFの3つのメリット
ETFで資産運用を行う3つのメリットを解説します。
コストが低い
ETFの主なコストは以下の通りです。
- 売買手数料:購入時・売却時にかかる手数料。金額は証券会社によって異なる
- 運用管理費用(信託報酬):ETF保有期間中に差し引かれる、ETFの運用・管理のためのコスト
ETFの売買手数料は、証券会社およびETFによっては無料という場合もあります。
また、運用管理費用もETFによって異なりますが、一般的に投資信託よりも低めです。たとえば、JPX日経インデックス400と連動する投資成果を目指す「NEXT FUNDS JPX日経インデックス400連動型上場投信」の運用管理費用は「年率0.11%」、予想配当利回りの高い日本株へ投資を行う「MAXIS高配当日本株アクティブ上場投信」の運用管理費用は「年率0.4125%」です(2023年10月13日現在)。
売買手数料および運用管理費用は証券会社のホームページで確認できるので、購入前には必ず目を通しておきましょう。
手軽に分散投資ができる
「幅広い資産・銘柄で構成されている」の項でも解説した通り、ETFは複数の資産・銘柄で構成されています。そのため、1つのETFを保有するだけで、複数の資産・銘柄に投資した場合と同じ分散効果を得ることができます。
たとえば、TOPIXとの連動を目指す「上場インデックスファンドTOPIX」は1口:2,384円(2023年10月13日現在)です。同ETFを保有するだけで、TOPIXを構成する2,000以上の銘柄に投資をした場合と同じ投資リターン・分散効果を得られます。
<そもそも分散投資のメリットとは?> 分散投資をすることで、相対的に安定的なリターンを目指せます。 1つの銘柄だけに投資をした場合、その銘柄が暴落すれば資産は大きく目減りしてしまいます。一方、複数の銘柄に投資をしていれば、仮に1つの銘柄が暴落してお他の銘柄でカバーできる可能性があります。 分散投資は、異なる値動きの銘柄を複数組み合わせることで、リスク(=価格の振れ幅)を抑えられます。 |
一方、個別株に分散投資をする場合、銘柄を選定し、銘柄ごとに購入手続きをした後は企業のニュースをチェックする必要があります。一般的にETFは、数千円~数万円程度の資金があれば購入できますが、数十万円~数百万円もの資金が必要なケースも珍しくありません。
このように、個別株投資と比べて手軽に分散投資ができる点はETFの大きな魅力といえるでしょう。
少額の資金で投資ができる
代表的なETFおよび個別株の必要資金をまとめてみました。
銘柄名 | 購入に必要な資金(手数料を除く) | |
ETF | 上場インデックスファンド225 | 33,510円 |
上場インデックスファンドTOPIX | 2,384円 | |
バンガード・S&P500 ETF | 396.42ドル (1ドル=150円の場合、約5万9,500円) | |
個別株 | トヨタ自動車 | 26万8,750円 |
ソニーグループ | 128万5,000円 | |
三菱UFJフィナンシャル・グループ | 12万3,750円 |
この表でもわかるように一般的に数万円~数十万円の資金を必要とする個別株投資に対し、ETFは数千円~数万円程度の資金を用意すれば、投資を始められます。
なお、個別株の中にも、相対的に株価が低く数千円~数万円で購入できる「低位株」と呼ばれる銘柄もありますが、種類は限られます。
ETFのデメリット・注意点
ETFのメリットだけでなく、デメリットや注意点も押さえることが大切です。
銘柄が限られている
ETFの銘柄数は2023年10月時点で299本です。
一方、個別株は東京証券取引所が運営している市場に上場しているものだけで3,900銘柄以上、投資信託は5,954本(2023年9月末時点)あります。
したがって単純に数だけを考えると、ETFは、個別株と投資信託よりも選択肢が少ないことがわかります。ETFで欲しい銘柄がなかったら、投資信託を購入する可能性もある場合は、銘柄のことも認識しておきましょう。
「自動積立」をできないケースが多い
金融商品を自動で積み立てられるサービスを活用することで、買付の手続きをする手間がなくなるほか、相場の良し悪しに資産運用を地道に続けることができます。
投資信託を自動積立できるサービスは多くの金融機関で提供されている一方、ETFの自動積立ができるサービスは投資信託と比べて多くありません。
少なくともSBI証券・マネックス証券・楽天証券はETFの自動積立サービスを提供していますが、この3社以外でETFの自動積立を希望している方は、口座開設前にサービスの有無を必ず確認しておきましょう。
対象指標と乖離するリスクがある
連動対象となる指標が存在しないアクティブ運用型ETF以外のETFには、あらかじめ連動を目指す対象指標が設定されています。そのため「対象指標とETFの値動きは連動している=対象指標と同じリターンが発生する」と考えがちですが、リターンにならないリスクもあります。対象指標のリターンとETFの基準価額(※)のリターンがさまざまな理由から乖離する場合があるので、知っておきましょう。
(※)基準価額:ETFの一口あたりの純資産額で、投資信託(ETF)の値段のこと。
<対象指標のリターンとETFの基準価額のリターンが乖離する要因・ケース> ・各銘柄の配当落ち日(※)とETFの配当落ち日に差があるため ・ETFと対象指数の組入額や組入比率が同一にならないケース ・ETFの注文量・取引量が少ないケース (※)配当落ち日:配当金を受け取る権利がなくなる日 |
ETFのリスクを回避する方法
ETFには「対象指標と乖離するリスクがある」の項で解説した「価格乖離リスク」のほかにも以下のようなリスクが存在します。
- 価格変動リスク:ETFの基準価額が変動するリスク
- 流動性リスク:思い通りの価格で売買できない、もしくは売買が成立しないリスク
- 為替変動リスク:為替の上下により資産額が変動するリスク
これらリスクを100%回避することはできませんが、異なる資産・銘柄で構成されるETFを複数保有することでリスクを抑えることはできます。これが、投資の原則の1つである「分散投資」の考え方です。
たとえば、アメリカのS&P500に連動を目指すETF「バンガード・S&P500 ETF」の投資と一緒に、日経平均株価に連動を目指すETF「上場インデックスファンド225」も投資をすることで、価格変動リスクや為替変動リスクを抑えられます。
なぜなら、仮にS&P500が下がったとしても日経平均株価が上昇すれば損失は抑えられるからです。また為替が円高に動いたとしても為替リスクのない「上場インデックスファンド225」も保有していると、単体で「バンガード・S&P500 ETF」を保有している場合と比べて為替による損失が限定されます。
このように、1つの銘柄を持つだけでもリスク分散が期待できるETFを複数保有することで、より高いリスクの低減する効果をもたらすことができるのです。
ETFで資産運用を始めよう!
ETFは少額・低コストで始められる、投資初心者でも始めやすい金融商品です。その一方、他の金融商品と同様に、価格変動リスクや流動性リスクも存在します。それらのリスクの軽減をはかるため、複数のETFを保有する手法も有効です。
ETFを購入するためには証券会社の口座を開設する必要がありますが、下記ポイ活サイト&アプリ「ポイントタウン」経由で口座開設をすることで、現金や電子マネー、ギフト券などとも交換可能なポイントをゲットできます。
たとえば、この記事にも触れたSBI証券で口座開設すれば5,100ポイントを、楽天証券・マネックス証券でも口座開設に加え、諸条件を達成することでポイントを獲得できます。
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