ファクタリングとは、事業者が保有している売掛債権を買い取ってもらい、代金の支払期日より前に売掛金を受け取る資金調達の方法です。
ファクタリングにはさまざまな種類があり、医療機関が利用できる「診療報酬ファクタリング」もそのうちの一つです。
では、診療報酬ファクタリングとはどのような仕組みなのでしょうか?本記事では、診療報酬ファクタリングの仕組みについて解説します。
利用するメリット・デメリットに加えて、診療報酬債権の譲渡は禁止なのか否かについてもお伝えしますので、せひ最後までご一読ください。
診療報酬ファクタリングの仕組みとは|診療報酬債権譲渡禁止?医療ファクタリング
診療報酬ファクタリングとは、介護報酬債権や調剤報酬債権といった債権を譲渡して入金を早期化する資金調達方法です。
ここでは、図解を使って解説していきます。
※著者作成
まず、利用者とファクタリング会社が債権譲渡の契約を結びます。
次に、「社会保険支払基金」や「国民健康保険」に対して、診療報酬債権の譲渡を利用者とファクタリング会社の連名で通知。
審査などが済んだら、ファクタリング会社から利用者へ債権の買取代金が振り込まれます。
これにより、利用者である医療機関は、本来数ヶ月後に入金されるはずの報酬を前倒しで受け取れるわけです。
そして、報酬が支払われたら、その代金がファクタリング会社へと振り込まれます。以上が診療報酬ファクタリングの仕組みです。
では、次に「売掛債権」と「診療報酬債権」の違いについて解説します。
売掛債権と診療報酬債権の違い
一般の事業者がファクタリングで譲渡する「売掛債権」とは、品物の販売やサービスの提供をした会社が、取引先や顧客から代金の支払いを受ける権利です。
それに対して「診療報酬債権」とは、診療を行った医療機関が「国民健康保険団体連合会」や「社会保険診療報酬支払基金」から診療報酬を受け取る権利を意味します。
つまり、一般の事業者は取引企業からの入金を担保にしているのに対して、医療機関は国保や社保からの入金を担保にしているわけです。
ちなみに、「診療報酬債権の譲渡は禁止では?」と思う方もいるでしょう。では、次の項目で診療報酬債権の譲渡が禁止されているのかについて解説します。
診療報酬債権の譲渡は禁止ではない
結論、診療報酬債権の譲渡は禁止されていません。民法第466条によって、診療報酬を含めた債権の譲渡が認められています。
(債権の譲渡性) 第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。 引用:e-Gov「民法|第四百六十六条」 |
この法律により、合法的に診療報酬債権を譲渡できるのです。
診療報酬ファクタリングのメリット|診療報酬債権を早期資金化。担保など
続いては、診療報酬ファクタリングを利用するメリットについて解説します。
- 診療報酬債権を早期に資金化できる
- 審査に通りやすい
- 担保・保証人が不要
診療報酬債権を早期に資金化できる
診療報酬ファクタリングを利用すれば、早期に資金化できます。
そもそも、診療報酬が受け取れるのは診療した月末から約2ヶ月後です。しかし、診療報酬ファクタリングを利用すれば、1ヶ月〜1.5ヶ月は短縮できます。
最短の場合、診療した翌月の15日頃にはお金を受け取れますので、キャッシュフローの改善が期待できます。
審査に通りやすい
ファクタリングは、貸付ではなく債権の譲渡なので、融資と比べて審査に通りやすいという特徴があります。
特に、診療報酬ファクタリングの請求先は「社会保険支払基金」や「国民健康保険」といった準公的機関です。
そのため、信用度が非常に高く、審査に落ちるケースはほとんどありません。
また、利用者の信用度は重要ではないため、財政状況が良くない法人でも利用できる可能性があります。
担保・保証人が不要
ファクタリングでは、取引先からの入金が担保となっているため、原則として担保・保証人は必要ありません。
特に、診療報酬ファクタリングは「社会保険支払基金」や「国民健康保険」といった準公的機関からの入金が担保なので、担保や保証人を求められるケースはほぼゼロです。
このように、診療報酬ファクタリングは担保・保証人が必要なく、利用のハードルが融資と比べて低くなっています。
診療報酬ファクタリングのデメリット|診療報酬債権を譲渡する際の注意点
続いては、診療報酬ファクタリングを利用するデメリットについて解説します。
- 受け取れる報酬が減って資金繰りが悪化する恐れがある
- 2社間ファクタリングより時間がかかる
- 悪徳業者が存在する
受け取れる報酬が減って資金繰りが悪化する恐れがある
診療報酬ファクタリングには、譲渡額の0.25〜1.0%の手数料がかかります。そのため、診療報酬ファクタリングを利用しない方が受け取れる報酬は多くなります。
買取希望額が高額だったり利用回数が多かったりすると、受け取れる報酬はどんどん減り、資金繰りが悪化する恐れがあるのです。
診療報酬ファクタリングを利用しても資金繰りを改善できない場合は、一度事業計画の見直しなどをした方が良いでしょう。
2社間ファクタリングより時間がかかる
ファクタリングの契約には、以下の2種類があります。
- 利用者・ファクタリング会社の2社で契約する「2社間ファクタリング」
- 利用者・ファクタリング会社・取引先の3社で契約する「3社間ファクタリング」
今回紹介した仕組みを見るとわかる通り、診療報酬ファクタリングは3社間契約です。そのため、申し込みから入金まで時間がかかります。
実際、2社間ファクタリングなら入金まで最短2時間というサービスがあるのに対して、診療報酬ファクタリングは最短でも5日程度は必要です。
利用する際は、診療報酬ファクタリングの入金スピードを頭に入れておくようにしてください。
悪徳業者が存在する
ファクタリングは利便性が高い一方で、法律による規制が少ないため、悪徳業者が多く存在しています。
なかには高額な手数料を請求したり、ファクタリング会社を装って違法な貸付を行ったりする業者がいます。
場合によっては、事業継続が難しくなるような事態を招く恐れがあるので、素性のわからないファクタリング会社の利用は避けるようにしてください。
診療報酬ファクタリングを扱うおすすめ業者5選!介護報酬にも対応
続いては、診療報酬ファクタリングを扱う業者を5つ紹介します。
ビートレーディング
画像:ビートレーディング
「ビートレーディング」は、一般的な2社間・3社間ファクタリングに加えて、診療報酬や介護報酬、調剤報酬の買取も行うファクタリング会社です。
審査で必要なのは「診療報酬請求書」と「通帳のコピー」の2点だけです。用意する書類が少ないため、スピーディーな資金調達が期待できます。
また、日本全国どこの医療機関であっても申込可能なので、対応エリアを気にしなくて良いのも魅力の一つです。
運営会社 | 株式会社ビートレーディング |
利用対象者 | 法人・個人事業主 |
買取可能額 | 下限上限なし |
手数料 | 2社間:4~12%3社間:2~9% |
入金スピード | 最短2時間 |
契約の種類 | 2社間・3社間、診療報酬・介護報酬・注文書 |
債権譲渡登記 | 不要 |
オンライン手続き | 可能 |
アクセルファクター
画像:アクセルファクター
「アクセルファクター」は、公式サイトで診療報酬や介護報酬の買取事例を公開しているファクタリング会社です。
このように、同じ医療機関の成功事例が掲載されているため、安心感があるうえに、利用する際のイメージが湧きやすいという特徴があります。
また、振込時間はたったの2日とかなりスピーディーです。
ほかの診療報酬ファクタリングと比べて格段に入金スピードが早いので、急ぎの方には特におすすめのファクタリング会社です。
運営会社 | 株式会社アクセルファクター |
利用対象者 | 法人・個人 |
利用限度額 | 30万円~無制限 |
手数料 | 1〜10%(売掛金が多いほど手数料が低くなる) |
入金スピード | 最短3時間、遅くとも翌日 |
契約の種類 | 2社間・3社間、診療報酬・介護報酬 |
債権譲渡登記 | 審査結果によって不要の契約も可能 |
オンライン手続き | 可能 |
審査通過率 | 93% |
カイポケ
画像:カイポケ
「株式会社エス・エム・エス」が展開するクラウド型の介護事業者向け経営支援サービス「カイポケ」は、ファクタリングサービスも提供しています。
手数料は0.8%〜と、業界トップクラスの安さを誇っています。
また、申し込みから5営業日には請求書の80%が入金されるなど、スピード感にも定評があるファクタリングサービスです。
診療報酬ファクタリングのほかに調剤報酬ファクタリングがあるので、薬局の経営者の利用にも適しています。
運営会社 | 株式会社エス・エム・エス |
利用対象者 | 法人・個人 |
利用限度額 | 非公開 |
手数料 | 0.8%~ |
入金スピード | 5営業日 |
契約の種類 | 介護報酬債権・診療報酬債権・調剤報酬債権 |
債権譲渡登記 | 審査結果によって不要の契約も可能 |
オンライン手続き | 可能 |
ベストファクター
画像:ベストファクター
「ベストファクター」は、一般的な3社間による診療報酬ファクタリングに加えて、医療機関とファクタリング会社の2社間で契約するサービスも行うファクタリング会社です。
2社間取引は、契約に関わるのが医療機関とファクタリング会社だけなので、「社会保険支払基金」や「国民健康保険」といった支払機関に承認を得る必要がありません。
そのため、手続きが簡単で時間がかからないという特徴があります。
支払機関に知られず資金調達したいなら、ベストファクターがおすすめです。
運営会社 | 株式会社アレシア |
利用対象者 | 法人・個人事業主・フリーランス |
買取可能額 | 30万円~1億円 |
手数料 | 2.0% |
入金スピード | 最短即日 |
契約の種類 | 2社間・3社間、注文書・診療報酬 |
債権譲渡登記 | 不要 |
オンライン手続き | 可能 |
三菱HCキャピタル
「三菱HCキャピタル」は、最短5営業日後に入金してくれる診療報酬ファクタリングです。
入金スピードが他社と比べて早いため、医療機器などの新規設備の資金調達だけでなく、さまざまな用途やニーズに合わせて利用できます。
また、手数料が0.2%と業界最低水準を誇っています。
三菱HCキャピタルの資金調達力があってこそ実現できた手数料なので、ほかのファクタリング会社では見られない安さでしょう。
とにかく手数料を抑えた診療報酬ファクタリングを利用したいなら、三菱HCキャピタルがおすすめです。
運営会社 | 三菱HCキャピタル株式会社 |
利用対象者 | 法人 |
買取可能額 | 非公開 |
手数料 | 0.2%~ |
入金スピード | 最短5営業日 |
契約の種類 | 介護報酬債権・調剤報酬債権・診療報酬債権・障がい給付費債権 |
債権譲渡登記 | 不要 |
オンライン手続き | 可能 |
診療報酬ファクタリングに向いている医療機関の特徴
診療報酬ファクタリングに向いている医療機関の特徴は次の通りです。
- 緊急で資金を必要としている医療機関
- 医療機器の導入を検討している医療機関
- 開業してまもない医療機関
まず、診療報酬ファクタリングでは、本来2ヶ月後に支払われるお金を最短1週間程度に短縮できます。
資金面において、緊急性の高い事態に直面している医療機関に向いていると言えるでしょう。
次に、高額な医療機器の導入を検討している医療機関も、ファクタリングを利用すればまとまった資金が手に入りますのでおすすめです。
最後に、診療報酬ファクタリングの審査は、支払機関の信頼度を重要視します。そのため、開業して間もない医療機関で、なおかつ実績がなくても、問題なく審査に通過できます。
もし、あなたが開業したばかりの医療機関なら、診療報酬ファクタリングで資金調達してみると良いでしょう。
まとめ
診療報酬ファクタリングを利用すれば、通常診療から2ヶ月後に受け取れる報酬を最短5日まで短縮することが可能です。
しかも、融資のように自社が審査対象ではなく、支払機関である「社会保険支払基金」や「国民健康保険」の信頼度が重要視されます。
そのため、開業したばかりや実績に乏しい医療機関でも、問題なく審査に通過できます。
診療報酬ファクタリングが経営状況の大きな助けとなるケースもあるので、資金繰りに困っている方は利用を検討してみると良いでしょう。