類焼や延焼の補償は類焼損害補償特約で!必要性も解説

「自宅からの出火を原因として隣家に延焼してしまい、損害を与えてしまったらどうしよう…」と不安に感じる人もいるのではないでしょうか。火災保険の基本契約では近隣への類焼損害はカバーできないため、特約を付加する必要があります。この記事では、火災保険の特約で類焼損害をカバーする必要性などを解説していきます。

この記事の監修者

金指 歩

保険のプロ

編集者・ライター。編プロ組織『となりの編プロ』代表。 大学在学中にFP3級を取得し、新卒で入社した大手信託銀行に4年半勤務。 住宅ローンや投資信託の営業、法人向け預金商品の営業や研修などを担当したのち、 不動産関連会社へ転職。その後証券会社、IT企業を経て、2017年よりフリーライターとして、 2020年頃より編集者として活動。金融系記事やビジネス系記事を多く制作している。
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延焼と類焼の違いとは?

建物から建物へ火が燃え移ることを延焼や類焼といいます。ここでは延焼と類焼の違いについて簡単に見ていきましょう。

「延焼」はほかの建物に火が燃え移ること

延焼とは、出火元となる建物からほかの建物などに火が燃え広がっていくことです。自宅を出火元として隣の建物などに燃え広がったときなどに使います。

「類焼」はほかの建物から火をもらい受けること

類焼は、ほかの建物から発生した火が自宅に燃え移り、自宅が焼けることをいいます。もらい火といわれる状態のことです。

類焼損害を火災保険でカバーする必要性

後述するように、基本的に自宅から出火して隣家に被害が及んだ場合でも、出火元の責任は問われません。しかし、トラブル回避などの理由から、隣家などが類焼により被害を受けたとき火災保険を利用して補償できる特約などがあります。ここでは、火災保険により類焼損害をカバーする必要性を取り上げます。

失火で賠償責任は生じない

まず、基本事項として押さえておく必要があるのが、基本的に失火で個人賠償責任は生じないということです。失火責任法により、重過失や故意を除いて、出火により隣家などを延焼させてしまっても賠償責任を負わなくてもよいこととなっています。この場合、類焼によって被害を受けた隣家などは、自身の加入する火災保険に保険金を請求して補償を受けることになります。

近隣との関係維持に役立つ

類焼による被害は法律上免除されているとはいえ、状況によっては類焼の被害にあった隣家などから不満の声が聞かれることもあるでしょう。

例えば、隣家が加入する火災保険を利用したものの十分に補償が行われなかった場合です。このようなケースでは類焼損害保険金を利用することで、不足分をカバーできるためトラブルの回避に役立ちます。

また、類焼による被害のあった家が火災保険に加入していない場合、同様に類焼損害保険金によりカバーすることも可能です。今後も同じエリアに住み続ける場合、近隣との関係性の維持に役立ちます。

類焼損害をカバーできる火災保険の特約

火災保険で近隣への類焼損害に対応できるようにするには、類焼損害補償特約や失火見舞費用補償特約を付けて火災保険の契約をする必要があります。それぞれの特約の内容を解説します。

類焼損害(補償)特約とは?

類焼損害(補償)特約は、自宅を出火原因として、近隣に類焼被害を与えたときに対応するための特約です。

近隣が類焼により住宅や家財に被害を受けたとき、被害を受けた人が加入する火災保険で補償が不足する部分をカバーする形で、類焼損害保険金として被害を受けた人に直接保険金が支払われます。

被害者が火災保険に加入していない場合はその損害額が補償の対象になることもありますが、加入している場合は、先に被害者の火災保険が使われる点に注意が必要です。被害者の火災保険を利用してもなお、補てんできない部分が類焼損害保険金として支払われます。不足分がない場合は、類焼損害保険金の支払いは生じません。

失火見舞費用特約とは?

失火見舞費用特約は、自宅が出火原因となって近隣に類焼損害を与えたとき、損害賠償の代わりに一定の額を見舞金として支払う特約です。火災保険被保険者の自宅からの延焼によって実際に損害を受けた家屋の所有者などに保険金が支払われます。

類焼損害(補償)保険金と異なるのが、一件あたりの支払金額が決まっていることです。契約する保険会社で保険金の額は異なりますが、一件あたり30万円、1回の事故につき火災保険金の20%までなどと上限が決められています。

先に紹介した類焼損害(補償)保険は、不足額がないときは保険金が支払われませんが、失火見舞費用特約は被害があった場合に一律に支払われますので、類焼損害(補償)特約でカバーされない部分をフォローできるでしょう。

自宅からの失火を手厚くカバーしたいときは、類焼損害(補償)特約と失火見舞費用特約の両方を付けることもできます。

類焼損害(補償)特約や失火見舞費用保険特約を付けるべき人

類焼損害(補償)特約も失火見舞費用保険特約も、自宅が出火元となったとき、近隣への延焼のリスクが高い人に向いた特約です。隣家がすぐそこにある人、古い木造住宅が多いエリアに住む人などは特約の付与を検討することをおすすめします。

近隣と距離が近い場合

住宅が密集しているエリアなど、隣家との距離が近い場合は、火がほかの建物に燃え移るリスクが高くなります。住宅が密集しているエリアだと、隣家だけでなく連なる住宅にも被害が及ぶ可能性がありますので、特約を付与しておいた方が安心でしょう。

築年数の古い木造住宅が広がるエリアの場合

木造住宅は、出火したときに火が燃え移るリスクが高いです。また、マンションなどの比較的新しい住宅は火災保険の加入者も多いですが、築年数の古い木造住宅のエリアでは火災保険の加入が進んでいないこともあります。もしものことを考えると、古い木造住宅の多いエリアでは加入していた方が安心です。

火災保険の特約ではなく火災保険自体の必要性や分譲マンションを購入したときに火災保険に入るべきかどうかについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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必要に応じて類焼損害をカバーする火災保険を検討しよう

失火責任法という法律により、重大な過失や故意のない類焼損害は賠償責任がありません。そのため、自宅からの出火で近隣に延焼してしまっても、法律上は弁償する必要がないことになります。

しかし、近隣との関係もあります。住宅の立地や周辺の環境から延焼のリスクがある場合は、類焼損害(補償)特約や失火見舞費用特約などの付加を検討されるのがよいでしょう。

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この記事を書いた人

本村結貴

2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP、中学校教諭二種免許状(英語)、等保有。 学び直しのため、現在は慶應義塾大学経済学部通信教育課程に在学中です。 企業経理や会計事務所での勤務経験を活かして、フリーライターとして、 会計、経理、金融系の記事を中心に執筆しています。

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