不動産投資を検討されている方の中には、アパートやマンションを一棟取得したいと考えている方もいらっしゃるでしょう。この記事では、アパートやマンションを一棟取得して運用する不動産投資のメリット・デメリットなど、一棟投資の基礎知識についてご説明します。
この記事の監修者
織瀬ゆり
不動産のプロ
元信託銀行員。AFP・2級FP技能士をはじめ、複数の金融・不動産資格を所持。
それらの知識をもとに、「初心者にもわかりやすい執筆」を心がけている。
2児の子育て中でもあり、子育て世帯向けの資産形成、女性向けのライフプラン記事を得意とする。
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一棟アパート投資と他の不動産投資との違い
ここでは、一棟アパート投資と他の不動産投資との違いをご説明します。より詳細な内容については後段で解説します。参考となる記事もご紹介していますので、あわせてご参照ください。
区分マンション投資との違い
区分マンション投資は、分譲マンションの一室を購入し、賃貸物件として運用する投資方法です。ワンルームマンション投資も区分マンション投資のひとつです。
流動性と利回りは一棟アパート投資より高いものの、空室になると賃料収入がゼロになってしまうという難点があります。
また、分譲マンションは各部屋を別々の人が所有しており、共用部分は全所有者で共有しています。共用部分の運営管理については管理組合の決議が必要で、所有者個人の一存では決められません。そのため、区分マンション投資は一棟アパート投資と比べると節税効果は低くなるといえるでしょう。
区分マンションの投資についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
一棟マンション投資との違い
一棟マンション投資は、アパートではなく一棟のマンションで行う不動産投資です。アパートとマンションの違いに明確な定義はありませんが、軽量鉄骨造や木造の2~3階までがアパート、鉄骨造、RC造、SRC造の3~4階以上がマンションと大別されます。
条件にもよりますが、流動性、利回りは一棟アパート投資と大きく変わりません。また、節税効果は一棟アパート投資よりも低くなります。
戸建て投資との違い
戸建て投資は、戸建てを賃貸物件として活用する不動産投資の方法です。
戸建ては、賃貸物件としての活用に限らず、自ら居住を希望する人の需要もあるため、一棟アパートよりも流動性が高くなります。また、
中古の戸建ては安く取得できる可能性が高い上、アパートよりも高い賃料を設定できる場合もあるため、利回りは一棟アパートよりも高くなります。
戸建て投資では、入居者がいなければ賃料収入がゼロになってしまいます。リスク分散を図るためには、複数の戸建てを取得して運用する必要があるでしょう。
戸建ての投資についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
一棟投資のメリット
ここでは、一棟投資のメリットについてご説明します。
資産形成を小さな手間で
一棟投資の賃貸管理は管理業者に委託することもできるため、運用の手間がかかりません。
不動産投資には様々なリスクがありますが、リスクの見通しは立てやすいといえます。特に一棟投資は初期費用が多額になるため、投資を始める前に十分に検討を重ね、事業計画や収支計画を練ることが重要です。しかし、運用開始後は、管理業者に賃貸管理業務(入退居手続き、賃料回収、トラブル対応など)を委託すれば、大きな手間はかかりません。
自ら資産効果をコントロールすることができる
一棟投資は、アパートおよびマンションの全てを自ら所有するため、自分で資産効果をコントロールすることができます。
区分マンション投資でも、専有部分の室内を改装するなどして、より魅力的な物件にすることは可能です。しかし、建物の外壁や廊下など、共用部分の劣化や汚れ、破損等の修繕は、区分所有者で構成される管理組合の決議によって決めるものであり、区分所有者個人の意思で修繕や改装を行うことはできません。
一棟投資では、自らの判断で建物の修繕を行うことができますし、ニーズやトレンドに合わせてインターネット設備やオートロック、宅配ボックスなどの設備導入を図ることもできます。そのタイミングを自分でコントロールできる上、計画的な修繕を適切に行って資産価値の維持を図ることもできるため、節税効果も期待できます。
利回りが高い
一棟投資は、区分マンション投資に比べて利回りが高いのもメリットです。
「収益物件 市場動向年間レポート2022年/不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 ( けんびや )」によると、2022年における投資利回りの全国平均は、区分マンションが7.41%である一方、一棟アパートは8.29%、一棟マンションは7.84%という結果になっており、一棟投資の利回りが高いことがわかります。
ただし、上記のデータはあくまでも表面利回りの平均データです。築年数やエリア(首都圏、地方など)によっても差が生じます。不動産投資を始めようと検討しているエリアの特徴に応じて、物件種別を選択するとよいでしょう。また、区分マンション投資では、管理費や修繕積立金などの経費も必要になります。税金を含め、経費全体を考慮した実質利回りによる評価もあわせて行っておきましょう。
収入金額が大きい
一棟投資では、区分マンション投資と比べると収入金額が大きくなります。
区分マンション投資では一室からの賃料収入に限られますが、一棟投資では複数の部屋から賃料収入を得られるため、収入の総額が大きくなります。
また、区分マンション投資では空室になると賃料収入がゼロになってしまいますが、一棟投資では一部に空室が生じても収入がゼロになることはありません。もちろん、想定される経費を盛り込んで収支計画を立て、自己資金(現金、預金など)で損失を補填しなくても不動産投資を継続できる入居率ラインを把握しておくことも重要です。しかし、収入がゼロになることがないというのは、不動産投資を行う上で安心感につながります。
資産価値が高く融資でも評価される
一棟投資では、区分マンション投資よりも土地を多く所有するため資産価値が上がり、金融機関における評価も高くなるため、高額の融資を受けられる可能性が高まります。
建物は耐用年数が経過すれば資産価値が大幅に低下しますが、土地は年月が経過しても評価が下がりにくい傾向にあります。むしろ、周辺環境の変化(再開発、生活利便施設や新駅の建設など)により評価が上昇する可能性も考えられます。
一棟投資のデメリット
ここでは、一棟投資のデメリットについてご説明します。
初期費用が多額になる
一棟投資は、区分マンション投資と比べて多額の初期費用がかかります。
「収益物件 市場動向年間レポート2022年/不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 ( けんびや )」によると、2022年における平均価格は、区分マンションが1,511万円であるのに対して、一棟アパートが7,478万円、一棟マンションは1億6,652万円という結果になっています。これらの資金を全て自己資金で捻出できるケースは稀で、アパートローンなどの事業性融資を利用して不動産投資を行うケースが一般的です。周辺エリアの賃貸需要や賃料相場に関する調査、情報収集は欠かせません。必要な空室対策を検討した上で、想定される賃料収入をもとに綿密な収支計画を立て、無理のない返済額であるか十分確認しておきましょう。
リスクが大きい
区分マンション投資と比べて、一棟投資は多額の初期費用がかかるためリスクが大きいといえます。
先段でお伝えしたように、不動産投資には様々なリスクがありますが、リスクの見通しは立てやすいといえます。特に一棟投資は初期費用が多額になるため、投資を始める前に十分に検討を重ね、妥当性の高い現実的な事業計画、収支計画を練ることが重要です。
流動性が低い(買い手が見つかりにくい)
将来の出口戦略として売却を視野に入れている場合、一棟物件は売却しづらく、流動性が低いといえます。
区分マンションは一棟物件と比べると価格が低く、少ないながらも単身世帯の自己居住用としての需要も見込めます。一方で、一棟アパート、一棟マンションは高額で購入需要は限定的であり、流動性は低いでしょう。
どの不動産投資にもいえることですが、投資を始める前から出口戦略を検討しておくことが重要です。将来的に売却を考えているのであれば、ローンの返済期間を考慮するのはもちろんのこと、先々まで人気の高い魅力的な賃貸物件として維持していく努力も必要でしょう。
維持管理費用が多い
一棟投資では、区分マンション投資と比べて多くの維持管理費用がかかります。
区分マンション投資では、建物全体の管理および修繕は管理費や修繕積立金によって実施されるため、自身で行うのは専有部分の管理および修繕に限られます。
一方、一棟投資では複数の部屋の管理、修繕に加え、共用設備などを含む物件全体の管理、修繕を投資家自身の判断で行う必要があります。そのため、区分マンション投資と比べて維持管理費用が多くかかるのです。
管理業者に賃貸管理業務を委託することもできるため、実際に管理や修繕の全てを投資家本人が行う必要はありません。ただし、管理業者への委託費が必要となるため、コストバランスを考慮した上で、どこまで委託するか検討する必要があります。
一棟投資に向いている人
一棟投資は、以下のような人に向いています。それぞれ理由を簡単にご説明します。
年収1,200万円以上
年収が1,200万円以上の人は節税効果の恩恵を受けやすく、一棟投資に向いています。
不動産投資で節税効果が大きいと言われるのは、建物の減価償却費を経費計上できるからです。減価償却費は取得価格(物件の購入価格)に耐用年数に応じた償却率を乗じて求めます。耐用年数が短くなれば、償却率は大きくなります。一棟アパートの多くは木造であり、他の構造よりも耐用年数が短いため、償却率が大きくなります。
減価償却費は実際には支払いが生じていない経費であり、減価償却ができる期間中は不動産所得を税務上の赤字にすることができます。この不動産所得による赤字は、会社員などが得ている給与所得と損益通算することができるため、節税効果が生まれます。
会社員などとして得ている給与収入がそれほど多くないケースでは、こうした節税効果の恩恵を十分に受けることができません。節税効果の恩恵を受けられる一つの目安が、年収1,200万円以上と考えておくとよいでしょう。
資産3,000万円以上
資産が3,000万円以上ある人は、一棟投資に向いています。
先にもご説明した通り、一棟投資では物件の取得価格が高額であるため、アパートローンなどの事業性融資を利用するケースがほとんどです。
しかし、全てをローンでカバーすることはできません。金融機関の審査では、担保価値とみなされる物件取得価格の概ね50%~70%程度が、融資を受けられる上限です。例えば、一棟アパートの平均価格7,478万円を基に計算すると、70%にあたる金額は、およそ5,234万円。残りの2,244万円は物件購入時に自己資金で支払う必要があります。
また、金融機関では、不動産の担保価値のみならず、事業計画や収支計画の妥当性についても審査されます。それに加えて、事業計画に万一狂いが生じたとき、あるいは突発的な支出が発生したときに自己資金でカバーできる余裕があるかどうかも重視されます。
不動産投資はリスクの見通しを立てやすい投資方法ではありますが、余裕をもって運用するには、資産にゆとりがあった方がよいといえます。
本業が忙しい人
本業が忙しく、あまり投資に時間を割きたくない方は、一棟投資に向いています。
区分マンション投資では、資産拡大のスピードアップや分散投資を図るためには、複数のマンションを運用する必要があり、立地がバラバラだと管理に手間がかかります。また、戸建て投資は、中古の戸建てを安く手に入れ、週末ごとにDIYを施しながらリフォームやリノベーションを行うといったことが苦にならない人に向いています。
一棟投資は、いったん運用が始まれば賃貸管理や修繕は管理業者に委託できるので、手間がかかりません。そのため、本業が忙しくあまり投資に時間を割きたくない方には、一棟投資が向いているといえます。
一棟投資の失敗例と対策
ここでは、一棟投資の失敗事例をご紹介し、その対策についてご説明します。
マンション一棟買い 失敗例と対策
【失敗例】
勤務先にかかってきた不動産会社の勧誘の電話に関心を持ったAさん。提案された不動産会社のマンションは満室経営している物件が多く、利回りも高いとの説明を受け、一棟投資をスタートさせました。しかし、実際には空室が生じることもあり、アパートローンなどの支払いに自己資金から補填することも多くなっています。
【対策】
不動産会社の提案を鵜吞みにせず、自分自身で十分に調査した上で、ゆとりのある事業計画、収支計画を立てましょう。
不動産は同じ構造、間取りの物件でも、立地や環境によって個別性が高いことを知っておきましょう。不動産会社から提供された資料だけで判断するのではなく、実際に現地に足を運び、資料に書かれていないことも自分の目で確かめることが重要です。
また、不動産会社によっては、利回りを高く見せるように細工した資料を提示するケースもあります。資料に記載されている数字の根拠をひとつひとつ確認するなど、納得がいくまで説明を求めましょう。
美しく、頑丈な物件だからといって入居者が集まるわけではありません。また、入居者が都合(転勤、進学、就職など)により退去し、空室が生じる可能性もあります。損益分岐点となる入居率がどれくらいか、あらかじめシミュレーションし、できる限り自己資金で補填しなければならない事態に陥らないよう、無理のない事業計画、収支計画を立てましょう。
アパート一棟買い 失敗例と対策
【失敗例】
アパート一棟投資に興味があったBさん。預金が500万円程度だったため、アパートローンでどのくらい融資を受けられるのか、資金面に不安を感じていました。ある不動産会社から紹介された金融機関に融資の相談をしたところ、希望に合ったアパートをフルローンで購入できる可能性があると言われ、アパート一棟の購入契約を交わしました。
【対策】
先段でご説明した通り、アパート一棟投資においてフルローンはありえません。しかし、通帳残高や契約書の数字を改ざんし、多額の融資を受けられるよう不正を行うケースもあります。
購入時の頭金のみならず、運用開始後に突発的な支出が生じる可能性もあるため、資金面に不安がある場合には無理をせず、区分マンション投資や戸建て投資など、他の不動産投資の方法に目を向けてみましょう。
一棟投資の始め方
ここでは、一棟投資をスタートするまでの基本的な流れについてご説明します。
投資の目的を決める
まず、一棟投資において重視する目的を決めましょう。例えば、長期的な資産形成が目的であればマンションや新築・築浅物件が適していますし、節税を図りたい場合には築古のアパートが適しています。何のために一棟投資をするのか十分に考えてみましょう。
相談をする
目的を決めたら、不動産会社に相談してみましょう。無料で相談に応じてくれますので、複数の不動産会社に声をかけてみるとよいかもしれません。不動産会社には、購入したいと考えている物件の規模や条件に加え、自分の資産概要や、資産運用で重視する目的についても伝えておくとよいでしょう。
物件を検討する
不動産会社から提案を受けた物件について検討します。このとき、資料だけで判断するのではなく、現地に繰り返し足を運び、十分に時間をかけて検討を進めましょう。
契約・決済
物件を決めたら、契約手続きと並行してアパートローンの融資相談を行います。契約時に融資の承認がおりていない可能性も考慮し、ローン特約(ローンの承認がおりなかったときに契約が白紙に戻る特約)が盛り込まれていることも確認しておきましょう。契約後、決済が完了すれば、一棟オーナーとなります。
一棟投資を成功させるためには入念に事業計画を練ろう
一棟投資は、管理業者のサポートを受けながら運用すれば、手間のかかる投資方法ではありません。しかし、物件をフルローンでは取得できないため、自己資金が必要になります。また、運用開始後に突発的な支出が発生する可能性もあるため、十分な資産を持っている方に適した不動産投資の方法です。一棟投資を成功させるためには、事前の情報収集、調査をもとに十分に検討を重ね、事業計画、収支計画を立てることが重要です。不動産投資に詳しい専門家などのサポートを受けながら、計画を練っていきましょう。
また不動産会社に相談する際など、
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