駐車場経営は不動産投資の中でも初期投資が少なく済み、投資初心者でも始めやすい手間のかからない投資方法として人気があります。
今回の記事では駐車場経営に関心のある方に向けて、駐車場経営の仕組みやメリット、成功のポイントについてご説明します。
この記事の監修者
キムラミキ
不動産投資のプロ
ファイナンシャルプランナー(AFP)宅地建物取引士 社会福祉士 キャリアコンサルタント
日本社会事業大学で社会福祉を学んだ後、外資系保険会社、マンションディベロッパーに在籍後、
FPとして独立。現在は、株式会社ラフデッサン 代表取締役として、個人向けライフプラン相談、
中小企業の顧問業務をお受けするほか、コラム執筆、セミナー講師、
山陰放送ラジオパーソナリティとしても活躍中。
http://www.laugh-dessin.com/
駐車場経営の仕組み
駐車場経営とは、利用していない土地を駐車場にし、駐車料金を得る不動産投資の手法です。アパートやマンション経営と比べて低コストで始められるため、人気を集めています。
駐車場を経営する場合、主に以下の3つの経営方式からいずれかを選択することになります。
・個人経営:自分で施工・管理する
・管理委託方式:駐車場の施工は自分で行うものの管理は委託する
・一括借り上げ方式:土地を貸して経営・管理を委託する
個人で施工・管理する場合、一定の時間や労力がかかるものの、コストの削減が可能です。一方、管理委託方式では、駐車場の施工責任は自身で負う傍ら、賃料の回収やトラブル対応などの管理は運営会社に委託できます。ただし、受け取った駐車料金の一部を管理料として委託先に支払わなくてはなりません。さらに、管理委託方式よりもコストが割高になりますが、一括借り上げ方式では、駐車場の経営から管理に至るまで、すべてを運営会社に委託できます。
それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解した 上で、自分に合った経営方式を選びましょう。
駐車場経営の種類
駐車場経営は、「月極」と「コインパーキング」の2つの種類(形態)に大きく分けられます。それぞれの内容についてご説明します。
月極
月極は、契約を結んで1か月単位で駐車料金を得る仕組みです。
月単位での契約となるため安定した収益が見込めるほか、精算機等の機械を設置する必要がないことから初期費用を抑えられます。
ただし、立地条件によっては募集しても契約が決まらず、思うように収入を得られないケースもあります。場所を決める際は周辺に競合となるパーキングがないか確認するなどして、一定の需要が見込めるかどうか見極める必要があります。
コインパーキング
コインパーキングは時間単位で駐車料金を得る仕組みです。
管理は業者に依頼するのが一般的です。その理由として、精算機や車両を止めるロック板などの設置が必要であり、すべてを個人で管理するのが難しい点が挙げられます。
月極よりも初期費用がかかるものの、駅近をはじめ、需要のある場所なら大きな売り上げを期待できるでしょう。
駐車場経営のメリット
駐車場経営には、主に以下の4つのメリットがあります。
使用していない土地を利用できる
駐車場経営は、使い道に迷っている土地がある場合に適しています。土地の活用方法が明確に決まるまでの間、駐車場として活用することも可能です。
初期費用を抑えられる
駐車場経営の中でも、平面駐車場であれば、アパート経営と異なり建物を建てるコストが発生しません。そのため、初期費用を抑えられるのがメリットで初期費用については、後段でご説明します。
短期間で事業をスタートできる
駐車場経営の中でも、平面駐車場であれば、スピーディーに事業を始められるのも魅力です。建物を建てるとなれば、数か月の期間を要することになるでしょう。
また、駐車場経営が上手く軌道に乗らなければ、建物を取り壊したりすることなく撤退可能です。このように、アパートやマンション経営と比べて、柔軟に対応しやすい点もメリットでしょう。
狭小地、変形地を利用できる
立地条件さえ整っていれば、活用が難しい狭小地、変形地でも駐車場経営は成り立ちます。活かし方次第で大きな収益が見込めるでしょう。
おすすめしないと言われる理由
アパート投資と比べて収益性が低い
アパートやマンションなどの不動産投資と比べると、駐車場経営の中でも特に平面駐車場は、階層を持たないため収益性が低いのが難点です。そもそも土地を平面で利用することになるので、土地の利用効率が低く、収容台数に限りがあるほか、1台当たりの収益も家賃収入には及びません。そのため、不動産投資でまとまった収益を出したいと考えている場合には、立体駐車場経営や他の不動産投資(一棟マンション投資など)の検討も必要でしょう。
なお、一棟マンション投資などについては以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
税制優遇が少なく節税に向かない
平面駐車場を運営する場合、駐車場は更地と同じ扱いになってしまうため、税制上の優遇が少ないのがデメリットです。
固定資産税や相続税においては評価減の対象とはなりません。また、所得税等の節税につながる減価償却費の対象は建物であり、土地は対象外です。精算機などの機械や監視カメラなどの設備は減価償却の対象となりますが、あまり大きな金額ではないため節税効果は期待できないでしょう。そのため、節税目的で投資を検討する場合、駐車場経営は不向きといえます。
駐車場経営の初期費用
駐車場経営を始める際、初期費用として以下の費用が必要となります。
整地費用
駐車場経営を始めるには、まず土地を整地する必要があります。地盤強化のため、掘削した上で平坦にし、砕石を敷き詰めるといった作業を行います。また、既存建物がある場合には、解体費用がかかります。整地費用は平米あたり3,000~4,000円が相場ですが、エリアや立地によって異なります。
舗装費用
整地後、アスファルト舗装を施す場合には、さらに平米あたり3,000~4,000円程度かかります。費用の相場はエリアや立地によって異なります。
駐車場建設費用
平面駐車場ではなく、立体駐車場や機械式駐車場を検討する場合は、駐車場建設費用が必要になります。立体駐車場の場合、所有する土地の広さ、駐車場の規模、自走式か機械式かなど、条件によって大きく費用が異なります。まずは、駐車場経営を検討している土地の面積で立体駐車場などの建設が可能かどうか、確認する必要があります。
運用にかかる税金
土地を駐車場として運用する際には、さまざまな税金が発生します。税金のルールや税率、納税の要否は収入規模や自治体によって異なるため、事前に把握しておく必要があります。
土地・建物にかかる税金
税金 | 税率 | |
土地・建物にかかる税金 | 固定資産税 | 1.4% |
都市計画税 | 0.3% |
【固定資産税】
土地や建物といった固定資産を所有している場合に課される税金です。土地を借りて駐車場経営を行う場合、固定資産税はかかりませんが、購入した土地であれば納めなくてはなりません。
【都市計画税】
市街化区域内に駐車場を所有している場合に課されます。都市計画税の対象となっているか否かは、自治体に問い合わせることで確認できます。
駐車場設備にかかる税金
税金 | 税率 | |
駐車場設備にかかる税金 | 償却資産税 | 1.4% |
【償却資産税】
駐車場の設備に課される税金です。
売上にかかる税金
税金 | 税率 | |
売上にかかる税金 | 消費税 | 10% |
【消費税】
駐車場経営の利益に対して課される税金であり、一般の商品やサービスと同じ税率です。
所得にかかる税金
税金 | 税率 | |
所得にかかる税金 | 所得税 | 所得によって異なる |
住民税 | 10% | |
個人事業税 | 5% |
【所得税】
駐車場経営により得た利益から経費を差し引いた額に対して所得税が課されます。
【住民税】
所得に基づいて計算され、自治体に納める税金です。
【個人事業税】
駐車場経営が個人事業である場合は、その所得に対して課されます。
駐車場経営における税金対策のコツ
先段でご説明した税金の節税対策につながるコツを3つ紹介します。
住宅用地にする
駐車場の近くに建物を建て、住宅用地と認められれば、固定資産税や都市計画税の軽減措置の対象になります。駐車場が200平米以下の場合、固定資産税が評価額の6分の1、都市計画税が評価額の3分の1に減額されます。
アスファルトに舗装する
土地をアスファルトに舗装することで、評価額が50%減額される特例が受けられます。
土地を整備する際、初期費用を抑えるために砂利のみで舗装するケースも多いでしょう。しかし、相続時にアスファルト舗装された土地で駐車場経営がなされていた場合、貸付事業用宅地等として扱われます。
償却資産は150万円未満に抑える
個人で駐車場を経営する場合、償却資産は150万円未満にすることがポイントです。その理由として、150万円以上になると償却資産税が発生することが挙げられます。
とはいえ、コインパーキングは精算機やロック板などの設備費用が多くかかるため、150万円未満に抑えるのは難しいと感じる方も多いでしょう。その場合には、土地の半分をコインパーキング、もう半分を月極にするなどの工夫を凝らすのもひとつの手です。
駐車場経営を成功させるためのポイント
駐車場経営を成功させるためには、以下の3つのポイントを意識しましょう。
形態と立地が重要
駐車場経営は、その土地に適した形態で運営することが大切です。たとえば、大規模なマンションや病院が近くにある場合には月極駐車場が向いています。一方で、駅近やオフィス街、観光地がある場合は、短時間利用者向けのコインパーキングが適しているでしょう。
周辺の相場変動の影響を考える
周辺に駐車場がある場合は、相場を把握した上でどのくらいの利益が見込めるか、事前にシミュレーションしておくことをおすすめします。
駐車場経営は初期費用が抑えられる点で、参入しやすい投資手法ですが、駐車場経営をスタートした後に近隣に安い駐車場ができて、収益が大きく下がってしまうこともあるでしょう。このように、駐車場経営は周辺の状況に大きく左右される可能性があるため、定期的に相場のチェックを行うことが大切です。
利回りは「実質利回り」で考える
駐車場経営を行うにあたって「利回り」を意識することは欠かせません。「利回り」とは、「どれだけの収入を得られるのか」といった収益性を判断するための基本となる指標のことです。
利回りは投資額に対して1年間の収益がどの程度になるかを示したもので、「表面利回り」と「実質利回り」に分けられます。このうち、投資の判断においては「実質利回り」の数値を見ることが重要です。
【表面利回り】
表面利回りとは、年間の駐車料収入の総額を物件価格で割った数字のことです。以下の計算式で求められます。
表面利回り = 満車時の年間収入 ÷ 土地の価格 × 100
物件などの情報には表面利回りが記載されていることが多いため注意が必要です。表面利回りには、初期費用やランニングコストが考慮されていません。
【実質利回り】
実質利回りとは、年間の駐車料収入から想定される年間諸経費(管理費や固定資産税など)を差し引いた金額を、物件価格に初期費用を加算した金額で割った数字のことです。以下の計算式で求められます。
実質利回り = (年間収入 ー ランニングコスト) ÷ (土地の価格 + 初期費用)× 100 |
収益予想の精度をより高めるためにも、収益をシミュレーションする際は実質利回りで判断しましょう。
不動産投資の利回りの詳細については、以下の記事をご参照ください。
「不動産投資 利回り」のページタイトルの記載を今後お願い致します。
ポイントを抑えた上で駐車場経営に挑戦しよう
駐車場経営は初期費用が抑えられるため、挑戦するハードルが低い投資手法のひとつです。しかし、収益性が低く、節税効果が期待できないことから、安易に駐車場経営をスタートさせるのは危険でしょう。
失敗に終わらせないためにも、土地に見合った形態を見極めるほか、入念な資金計画を立てることが大切です。その際は、土地活用相談などを利用して、最適な経営方式・形態についてアドバイスを受けることを欠かさないようにしましょう。