最近投資家の間で話題になっている「小口不動産投資」。比較的少額から始められる手軽さから、チャレンジしてみたいと思っている方もいるでしょう。
今回の記事では小口不動産投資に関心のある方に向けて、その仕組みや種類、また他の投資との違いやメリット・デメリットについて解説します。
この記事の監修者
キムラミキ
不動産投資のプロ
ファイナンシャルプランナー(AFP)宅地建物取引士 社会福祉士 キャリアコンサルタント
日本社会事業大学で社会福祉を学んだ後、外資系保険会社、マンションディベロッパーに在籍後、
FPとして独立。現在は、株式会社ラフデッサン 代表取締役として、個人向けライフプラン相談、
中小企業の顧問業務をお受けするほか、コラム執筆、セミナー講師、
山陰放送ラジオパーソナリティとしても活躍中。
http://www.laugh-dessin.com/
小口不動産投資の仕組み
小口不動産投資とは、1棟あるいは複数棟の不動産を1口数万円から1,000万円程度に小口化し、投資家に向けて販売する不動産特定共同事業法に基づく商品です。また、そこから得られた賃料収入や売却益は投資額に応じて各投資家に分配されます。
小口不動産投資で対象となる不動産は多岐にわたり、アパートやマンション、戸建てをはじめ、オフィスビルや商業ビルなど様々です。個人では投資が難しい不動産にも比較的手頃な価格で挑戦できるのが、小口不動産投資の魅力といえるでしょう。
従来は東京など首都圏を中心とした不動産が数多く扱われている傾向にありました。しかし昨今では人気が高まっており、都心部のみならず地方の不動産も見受けられるようになりました。今後ますます盛り上がることが予想される投資手法のひとつとされています。
小口不動産投資の種類
小口不動産投資は「匿名組合型」と「任意組合型」の2つに大別されます。ここではそれぞれの違いについて、見ていきましょう。
匿名組合型 | 任意組合型 | |
---|---|---|
事業主体 | 事業者 | 出資者(共同事業) |
出資金額 | 1口数万円程度から(金銭出資) | 1口100万円程度から(金銭出資、現物出資※1、労務出資※2) |
運用期間 | 短期から中長期 | 長期 |
特徴 | ・少額投資可能・短期運用が多い | ・相続対策に活用可能・長期運用に適している |
投資家の意思決定権 | なし | あり |
所得の分類 | 雑所得 | 不動産所得 |
※1金銭出資:金銭による出資。口座振り込みなど手続きがシンプルなのが特徴。
現物出資:事業者から不動産を小口分購入し、購入した現物を任意組合に出資。投資家の名前で不動産登記される。
※2労務出資:労働の形で行われる出資のこと。
匿名組合型
匿名組合型とは投資家が金銭による出資を行い、事業者は事業を通じて得た利益を投資家に分配する投資形態を指します。投資家と事業者が匿名組合契約を締結し、契約に基づいて「事業者」が主体となって事業を行うのが特徴です。
一般的に、匿名組合型の不動産小口化商品は1口数万円から投資ができるほか、数ヶ月単位での短期運用が可能であるケースが多く見受けられます。
任意組合型
任意組合型は出資した複数の投資家が共同で事業主体となり、事業を通じて得た利益を投資家に分配する投資形態を指します。任意組合型はさらに「現物出資型」「金銭出資型」の主に2つに分類されますが、いずれも不動産の所有者とみなされるため、相続時の節税効果が期待できます。
任意組合型の不動産小口化商品は1口100万円以上と匿名組合型よりも高く設定されているほか、10年以上など期間が長期にわたるケースも多く見受けられます。
小口不動産投資とそのほかの投資との違い
ここでは小口不動産投資と他の投資についての違いについて、解説します。
小口不動産投資とREITの違い
REIT(リート)とは不動産投資信託のことで、不動産投資法人が投資家から集めた資金をもとに商業施設やオフィスビル、マンションなどの不動産を購入し、投資のプロが運用を行います。REITは証券化商品であるため流動性が高く、投資家の思ったタイミングで自由に売買が可能です。ただし、金利変動リスクがあるほか、REITの運用を行っている不動産投資法人の上場廃止や倒産のリスクがある点に注意しなければなりません。
小口不動産投資の場合、特定不動産への投資となることから投資先不動産の運用成績が分配金として投資家に還元されます。REITと異なり、自分の目利きで将来値上がりする可能性がありそうな不動産を選択できる点が利点といえるでしょう。
REITについては以下の記事で詳しく解説しています。
小口不動産投資と一般的な不動産投資の違い
一般的な不動産投資では初期費用として多額の資金が必要となるほか、物件の維持管理にかかる対応も投資家が行わなければなりません。また、不動産は流動性が低く分割もしにくいことから、売却しようと思ってもなかなか買い手が見つからない、相続時に他の相続人とトラブルになるといったケースも少なくありません。
一方で、小口不動産投資では任意組合型であったとしても1口100万円ほどの資金から始められるほか、すでに小口化されているため分割しやすくトラブルになりにくいといったメリットがあります。
一棟投資や戸建て投資など現物投資については以下の記事で詳しく解説しています。
小口不動産投資とクラウドファンディングの違い
不動産クラウドファンディングはインターネット上で投資家から資金を募り、集まった資金を元に事業者が不動産を購入、運営します。比較的最近登場した新しい投資形態としても知られており、不動産小口化商品と同様に「匿名組合型」と「任意契約型」に分かれているのが特徴です。
小口不動産投資と異なり、インターネットを通じて投資家の募集を行うことから、人気が集中する物件は購入できない恐れがあるほか、場合によっては数十秒から数分で案件が終わってしまうことも少なくありません。不動産クラウドファンディング特有のせわしなさが苦手な人は、小口不動産投資を検討することをおすすめします。
小口不動産投資のメリット
小口不動産投資のメリットは、以下の通りです。
少額から投資ができるためリスク分散が可能
小口不動産投資は少額からスタートできるのが利点です。たとえば、都内の一棟マンションを購入する場合、初期費用に億単位といった大きな資金が必要となります。しかし、小口不動産投資を利用すれば、数万円から100万円程度で投資可能です。そのため、不動産投資を始める際に資金面で見送っていた人にとっても比較的始めやすく、複数の物件に分散投資しやすいため、収益の変動リスクを抑えることが可能です。
また、現物不動産に比べると利回りは低くなりますが、3~5%ほどの利回りで運用できるケースがほとんどです。そのため、債券投資や定期預金を活用した資産形成に比べて効率よく資金を増やせる可能性が高いといえます。現物不動産に比べ、運用や管理に関する手間もかからず、日中忙しいビジネスパーソンや主婦の方でもチャレンジしやすいでしょう。
不動産投資のリスクについては以下の記事で詳しく解説しています。
保有者としての資産運用
小口の不動産とはいえ、任意組合型の場合、物件を所有することには変わりありません。そのため、相続時には不動産を直接所有している場合と同様の財産評価となり、節税対策としての効果が期待できます。
専門家が選んだ良質な物件投資への投資が可能
投資対象となるのは、不動産運用のプロが選んだ良質な物件です。小口不動産投資で運用対象となる物件の多くは安定した賃貸収入が見込めると判断された物件や、将来的に不動産価値が上がりそうな物件となっています。また、プロが選ぶ物件には個人として購入できない規模の大型物件や、市場に出回ることのない物件も含まれており、独自の情報が必要な物件においても安心して投資できるでしょう。
ただし、商品によっては応募が殺到し買いたくても買えないケースがあることに注意が必要です。一般的に申し込みは先着順となるため、こまめに掲載物件をチェックすることを心がけるほか、募集開始日や商品説明書にも目を通しておくとよいでしょう。
小口不動産投資のデメリット
小口不動産投資には以下のようなデメリットもあります。
元本保証や賃料収入の保証がない
小口不動産投資は一般的な不動産投資と同様に、元本保証がありません。そのため、売却時に物件の価値が下がっている場合、元本割れを生じるリスクがあるため注意が必要です。さらに、入居者が決まらないままの状態が長期化すると、賃料収入は途絶えてしまいます。もちろん物件を選ぶ際は、「安定した賃料収入が得られるのか」といった点を重視しますが、予想外の災害・事故などが起こるケースも少なくありません。賃料収入の保証がない点も十分に理解しておきましょう。
途中解約できない商品がある
小口不動産投資では、途中解約ができない商品も多く見受けられます。たとえ途中解約が可能な場合でも、売却先を見つけるために仲介が必要となり、すぐには解約できないケースがほとんどです。また、途中解約をする際に買い取りをしてくれる業者もありますが、市場価値よりも安価な取引となってしまうでしょう。なお、途中解約をする場合は手数料が発生するため、事前に途中解約についての確認が大切です。
融資を受けることができない
一般的な不動産投資は、投資対象の不動産を担保に融資を受けられるケースがありますが、小口不動産投資ではそれができません。そのため、小口不動産投資をする際には、必ず自己資金が必要となります。
小口不動産投資が向いている方
小口不動産投資が向いている方の特徴は、以下の通りです。
・物件を選ぶ基準に不安がある
・リスクをおさえて投資をしたい
・物件管理にかかる手間を省きたい
小口不動産投資では、運用・管理をプロに一任できるため、投資初心者や忙しくて時間が確保できない人にぴったりです。また、少額から投資が可能なため、リスク分散しやすく、結果として大損するリスクを最小限に抑えられるでしょう。つまり、よりリスクを抑えて投資がしたいといった方にも向いています。
一方で、小口不動産投資では融資が受けられないため、投資資金がない場合には不向きといえます。また、「より高利回りを求めたい」「自由に投資をしたい」と考えるのであれば、一般的な不動産投資や他の金融商品を選択肢として検討したほうがよいかもしれません。
小口不動産投資の始め方
小口不動産投資の始め方ですが、「匿名組合型」「任意組合型」のどちらを選んだ場合でも、基本的な流れは以下の通りです。
- 商品についての情報を集める
- 申し込み期間中に応募をする
- 匿名組合契約あるいは任意組合契約を締結する
それぞれについて、見ていきましょう。
商品についての情報を集める
まずは小口不動産投資の商品を扱っている不動産特定共同事業者を探しましょう。ホームページや資料請求、セミナー参加を通じて商品についての詳細な情報や資料を集めて、比較検討してみましょう。その上で、自分のリスク許容度を踏まえた商品をピックアップするとよいでしょう。
申し込み期間中に応募をする
商品を決めたら、申し込み期間中に応募します。小口不動産投資は人気が高く、応募と同時に完売してしまうケースも少なくありません。そのため、こまめに情報をチェックしておくことが大切です。
匿名組合契約あるいは任意組合契約を締結する
匿名組合型の場合、応募して出資が認められた後、不動産特定共同事業者と匿名組合契約を締結します。匿名組合型は、不動産の所有権は持たないことから、登記を済ませる必要はありません。運営会社が不動産を運用し終わると、投資した金額と運用による利益が投資家に還元されます。(※元本保証がない点に注意)
一方、任意組合型の場合は任意組合契約を締結した後、不動産の所有権に関する登記手続きが必要な場合もあります。登記は自分で行うこともできますが、手続きや必要な書類が多く、煩雑となるため司法書士をはじめとした専門家に相談するとスムーズでしょう。その後の流れは匿名組合型と同様です。
不動産小口投資なら少額から投資可能
小口不動産投資は1口1万円から10万円程度の資金でも投資が始められますし、運用期間もさまざまです。そのため、自身のニーズやリスク許容度に見合った物件を見つけやすいでしょう。ただし、申し込みは先着順となるケースが大半です。気になる物件があるかどうか日頃から気に掛けながら、関連する書類や情報についても目を通しておきましょう。