一口に不動産投資といっても、その種類はさまざまです。不動産投資を成功させるためには、不動産投資の種類ごとの特徴やメリットそしてデメリットを理解したうえで自分に合った投資方法を選ぶ必要があります。
今回は不動産投資の種類について解説するとともに、物件を選ぶ際のポイントについても解説します。
この記事の監修者
逆瀬川 勇造
不動産のプロ
大学卒業後、地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、 2011年9月より不動産会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。 2018年より独立・2020年合同会社7pocketsを設立し金融や不動産に関するコンテンツ作成に取り組む。 2級FP技能士(AFP)、宅建士
不動産投資の目的
不動産投資を始めるにあたっては、不動産投資を行う目的をはっきりさせておく必要があります。
不動産投資で得られるメリットは多くあるものの、そのうちのどれを最終的な目的にするのかで、選ぶ投資方法も変わります。
不動産投資の代表的な目的には以下のものがあります。
収入の増加
不動産投資とは、不動産を購入し、第三者に賃貸に出すことで家賃収入を得るといった特徴があります。現在の収入を増やすために、不動産を活用することは、不動産投資の一般的な目的といえます。
もちろん物件の購入費用や維持管理料などの負担はあるものの、入居者がいる限り毎月一定の収入が得られる点は不動産投資の大きなメリットといえるでしょう。
ただし、不動産投資を始める際には物件の購入費用などまとまった資金が必要になるほか、管理費や修繕費など不動産投資にかかる費用も考えておかなければなりません。しかし、物件の購入にあたっては、ローンを組むことで少ない資産で大きな収益を得られます。これをレバレッジ効果といいます。レバレッジ効果を活用することで、不動産投資におけるリターンを最大化することができるのです。
相続税対策
相続税対策を目的に不動産投資を行う人もいます。なぜなら、同じ額の現金と不動産を持つなら、不動産のほうが相続税を抑えられるからです。
相続が発生した際には、被相続人の財産を法定相続人で分割する必要がありますが、その財産評価の方法が現金などの金融資産と不動産では異なります。現金は時価で計算されますが、不動産の場合、土地と建物それぞれで決められた方法で財産評価を行い、それが時価よりも低くなります。
具体的には、土地は路線価方式もしくは倍率方式で求められ、仮に路線価方式だと時価の80%程度まで評価額を下げることができます。建物については固定資産税評価額を元に計算するため、時価の70%程度の額に納まり、結果として時価よりも低く評価されるため、最終的な相続税額が抑えられます。
さらに、不動産投資用の賃貸物件を相続するケースだと、評価額が自分で住む物件とは異なり、借地権割合や借家権割合、そして賃貸割合に応じた額になるため、さらに評価額を下げることが可能です。
生きているうちは不動産投資として家賃を受け取り、亡くなった後も評価額を下げながら相続人に財産を引き継ぐことを目的として活用できます。
インフレ対策
日銀は金融政策として「2%の物価上昇」を掲げています。年を追うごとに物の値段が高くなっていると感じている人も多いのではないでしょうか。
しかし、現在の低金利下では現金をそのまま持っていても、物価の上昇に追いつかず、現金の価値が下がってしまいます。今は100万円で購入できている商品が値上げで110万円になった場合、持っているお金の価値は10%下がったことになります。
その分、不動産は実物資産に該当しますので、物価が上昇すれば不動産の価格も上昇します。そのため、現金で資産を持っているよりもインフレ対策になるというわけです。
また、一般的にインフレが進むと家賃も上昇する傾向があります。不動産投資家は、インフレの際には家賃収入を増やすことを期待できます。
不動産投資を行う人の中にはインフレ対策を考慮しながら行っている人も多く存在します。
老後のための資産形成
リタイアした後の収入は主に年金のみです。年金だけでは生活が不安だと思う人は、早めに老後資金を形成しておかなければなりません。
このような時に、不動産投資物件を所有しており、家賃を得られるなら年金以外の収入が確保できるため、生活に余裕ができるでしょう。また早い時期に老後資金準備のひとつとして不動産投資に取り組んでおくことで、老後生活のためのまとまった資金を準備できます。
老後のもうひとつの収入源として不動産投資を行うことも目的のひとつといえるでしょう。
物件によっては、高額で売却できる可能性もありますので、最終的に保有している物件をどうするかも考えながら取り組むことが大切です。
不動産投資の主な種類
不動産投資は大きく9つの種類に分けられます。
ここではそれぞれの不動産投資の種類や特徴と、メリットやデメリット、注意点などについて解説します。
一棟マンション・アパート投資
一棟マンション・アパート投資とは、マンションやアパートを一棟まるごと購入し、賃貸に出すことで家賃収入を得る投資方法です。
一棟まるごと購入することから、初期費用が大きくなる点がデメリットですが、貸し出せる戸数が多いため家賃収入も多く、効率よく収入を増やせるといったメリットがあります。また、区分マンション投資のように貸し出せる戸数が1戸しかない場合、入居者がいない時期は家賃収入が途絶えてしまいますが、一棟マンション・アパート投資などで複数戸所有することで空室リスクを抑えられます。
また、一棟マンション・アパート投資の場合、購入金額が大きいため、ローンを利用する人が多いですが、家賃収入が多ければ余裕分を返済に回すことで早めに完済できます。
一棟マンション・アパート投資は、高額な初期費用を用意できる人に向いている投資方法です。
ただ、外壁や建物の共有部分などの修繕費用が定期的にかかるため、一棟マンション・アパート投資を行う際には事前に修繕計画を立てておくことも大切です。
一棟投資については以下の記事で詳しく解説をしています。
区分マンション投資
区分マンション投資とは、マンションの一戸を購入して賃貸収入を得る投資方法です。経営がうまく行けば、さらに購入する戸数を増やすことで空室リスクを抑えられます。何より一棟マンション・アパート投資と比べ、初期費用が少なくて済む点はメリットといえるでしょう。
その点では、区分マンション投資は不動産投資初心者に向いています。まず区分マンション投資で投資方法を理解し、だんだんと保有戸数を増やしていくなどを考えることをおすすめします。
区分マンション投資は一棟マンション・アパート投資と異なり、修繕の責任を持つのは購入した専有部分のみです。そのため、大規模修繕のような大がかりな修繕費用は必要ありません。ただ、専用部分の設備に不具合が生じた際には、対応しなければなりませんので、注意しておきましょう。
不動産投資を行うにあたって、最終的に物件をどうするかを考えておくことはどの不動産投資の種類でもいえることですが、区分マンションの場合、比較的売却しやすいといったメリットもあります。
区分マンション投資については以下の記事で詳しく解説をしています。
戸建て投資
戸建て投資とは、文字どおり一戸建ての住宅を賃貸に出すことで賃貸収入を得る投資方法です。ファミリー向けに貸し出す以外にも、シェアハウスとして貸し出す方法もあり、使い方はさまざまです。
また、余った土地に住宅を建て、賃貸に出す方法もあります。土地活用に悩んでいる場合では、一棟マンションや一棟アパートを建てるにはそれなりの広さの土地が必要ですが、戸建て投資の場合は広大な土地を必要としないため、選択肢の幅が広がる点もメリットでしょう。
ただ、一戸建ての場合は建物全体の修繕計画を立てておく必要があり、屋根や外壁などの修繕費用がかかる点には注意が必要です。
戸建て投資は、土地を保有している人や現在利用していない一戸建てを所有している人に向いている投資方法です。
戸建て投資については以下の記事で詳しく解説をしています。
駐車場投資
土地だけを所有している人におすすめなのが駐車場投資です。建物を建てる必要がないため、一棟マンション・アパート投資や区分マンション投資、戸建て投資ほどの費用がかからないほか、立地によっては安定した収入が見込めます。
コインパーキングとして貸し出す際には、設備投資が必要ですが、専門の業者に委託できるため、手間がかからず始められる点はメリットといえるでしょう。
駐車場投資については以下の記事で詳しく解説をしています。
REIT
REITとは、不動産投資信託の略称で、投資家から集めた小口の資金をひとつの大きな資金にまとめ、オフィスビルや倉庫、店舗といった不動産を購入して、第三者に貸し出すことで得られる家賃を収益にする投資商品です。
REITの魅力はなんといっても現物の不動産を保有する必要がなく、また少額から投資ができる点です。
現物投資にはまだ抵抗があると考えている人に向いているといえるでしょう。
ただ、投資先によっては思ったほどの家賃が得られなくなるなど、市場の影響を受ける点や、運営会社の倒産リスクも考えておく必要があります。
REITには多くの種類があり、それぞれに投資先(不動産)が異なりますので、どのような不動産に投資しているのかを見極めたうえで商品を購入することが大切です。
REITについては以下の記事で詳しく解説をしています。
不動産小口化商品投資
ひとつの不動産を数万円~100万円程度の小口に分けて販売し、購入者は購入した口数に応じた賃料収入を得る投資方法です。また、不動産を売却した際には、保有している口数に応じた売却益を得られます。
現物の不動産を保有する方法ではありますが、複数人で保有しているためさまざまなリスクを1人で負うことなく分散できる点はメリットでしょう。
ただし、不動産小口化商品には元本保証がない、利回りが低くなる傾向がある、中途解約ができない場合がある、融資が使えないため自己資金が必要などの注意点もあります。
不動産を保有したいと思っているものの、管理の手間を省きたいと考えている人や、相続対策として不動産を保有したいと考えている人に向いています。
不動産小口化商品投資については以下の記事で詳しく解説をしています。
不動産投資クラウドファンディング
不動産クラウドファンディングは、インターネット上で不動産投資プロジェクトに少額から投資できる比較的新しい投資手法です。投資家は運営会社のプラットフォームから、さまざまな物件を選んで投資できます。元本割れへの対策として優先劣後構造という仕組みを採用しているファンドが多いのも特徴です。
一方、REITは不動産投資信託であり、証券取引所に上場しています。複数の物件に分散投資されており、投資家は個別の物件を選べません。流動性が高く、いつでも売買できるメリットがある反面、価格の変動リスクがあります。
不動産クラウドファンディングは、投資期間が定められており中途解約ができないことが多いですが、価格変動が少なく安定的です。投資家の目的やリスク許容度に合わせて、適切な投資手段を選ぶことが大切です。
ビジネスビル投資
ビジネスビル投資とは、ビジネスビルの一室を事業用として企業に貸し出す投資方法です。相手が企業という特性上、ある程度の広さが必要なことや、居住用ではなく事業用で貸し出す場合には家賃に消費税を加算しなければならない点を理解しておく必要があります。
ビジネスビルのワンフロアを購入するというケースはなかなかないため、立地条件のよい広い土地を保有している人が、その土地の上にビジネスビルを建設し、テナントを募集する方法がよくとられています。
シェアハウス、民泊投資
賃貸物件を複数人で分けあって利用してもらう形式をシェアハウスといいます。また、民泊とは保有している物件の一部や全部を旅行者用の宿泊施設として提供することをいい、最近注目されている投資方法です。
利用しない物件を保有しているなら、シェアハウスや民泊投資は不動産投資の入り口として利用しやすいといえるでしょう。
ただし、シェアハウスにしても民泊にしても不特定多数の人が利用することになるため、物件の利用について事前にルールをきちんと決めておくことが大切です。また、法律や規制の遵守、近隣住民への配慮、適切な管理体制の構築など、さまざまな課題に取り組む必要があります。
不動産投資における利回りの種類
不動産投資には「表面利回り」「実質利回り」そして「想定利回り」の3つの利回りがあります。
不動産投資を行うにあたり、それぞれの利回りの違いを理解しておくことは重要です。ここではそれぞれの利回りについて解説します。
表面利回り
表面利回りとは、年間の家賃収入だけでみた利回りのことです。そのため、表面利回りは以下の式で求められます。
年間の家賃収入÷物件価格×100
たとえば一棟アパートを所有しており、アパートの購入価格が1億円だったとします。そして、年間の家賃収入が500万円だった場合の表面利回りは、
500万円÷1億円×100=5%
です。
表面利回りだけみると、非常に利回りがよく見えますが、実際には不動産投資にかかる費用などを家賃収入から差し引かなければならず、最終的な利回りは表面利回りよりも低くなります。
物件情報では表面利回りが記載されているケースが多いため、表面利回りだけを考えるのではなく、不動産投資を行うにあたり、どのような経費がかかるのかも考慮して考えることが大切です。
実質利回り
実質利回りとは、家賃収入から不動産投資にかかった経費を差し引いて求める利回りで、より正確な利回りが分かります。実質利回りを求める式は以下のとおりです。
(年間家賃収入-年間の経費)÷物件価格×100
たとえば、先ほどの表面利回りと同じ家賃収入および物件価格で、年間にかかった経費が50万円だった場合、実質利回りは
(500万円-50万円)÷1億円×100=4.5%
となり、表面利回りよりも少なくなることが分かります。
想定利回り
想定利回りとは、物件すべてから家賃を受け取れる、つまり満室状態を考えた際の利回りです。想定利回りは以下の式で求めます。
満室状態の年間の家賃収入÷物件価格×100
一棟アパートが満室になったと想定した場合の年間家賃収入が800万円の場合、物件価格が1億円だと想定利回りは
800万円÷1億円×100=8%
です。
想定利回りを考える際には、あくまでも空室リスクを考慮しない場合の利回りであることを理解しておく必要があります。
中古物件と新築物件はどちらがよい?
不動産投資用の物件を購入するにあたり、中古物件と新築物件のどちらを選ぶべきなのでしょうか。
ここでは中古物件そして新築物件の特徴について解説します。
中古物件
中古物件を選ぶメリットは、新築物件よりも安く購入できる点です。購入価格が低ければ、同じ家賃収入を得たと考えた場合、中古物件を選ぶほうが表面利回りは高くなります。
ただし、中古物件の場合入居者がより気に入ってもらえる物件にするためのリフォームが必要になるケースもあり、リフォーム費用が高額になる可能性にも注意しておかなければなりません。
中古物件を購入するにあたっては、これまでの修繕の状況や入居者率などを考慮しながら決めるようにしましょう。
新築物件
新築物件は中古物件と比べ、購入価格が高くなりますが、購入後すぐに入居者を募集できる点がメリットです。また、新築であれば、家賃も高めに設定できるでしょう。
ただし、保有している間に入居者が変わってしまうとその後は中古物件として扱われるため、空室が続く場合は家賃の引き下げなどを考えなければなりません。
新築物件を購入するなら、できるだけ長く入居してもらえる入居者を探すことが大切です。
都心物件と地方物件はどちらがよい?
不動産投資用の物件を購入する際には都心か地方かも考える必要があります。都心そして地方では入居者のニーズなどの特徴が異なりますので、慎重に検討して選ぶようにしましょう。
都心物件
都心は人口が多いため、募集をかけた際に入居者が集まりやすいといった特徴があります。
空室リスクを低くできる点が都心物件のメリットといえるでしょう。また、需要が多いことから中古でも築浅であれば入居者が決まりやすい点もメリットです。
ただし、物件を取得するにあたり、地方よりも物件のほうが、購入価格が高額になる傾向にありますので、地方物件を取得するよりも初期費用が高くなる点には注意しておきましょう。
地方物件
地方は都心よりも人口が少ないため、入居者が集まらない、つまり空室リスクにおける対策を考える必要があります。
交通アクセスや周辺の環境など立地条件のよい物件を見付けるためにも、自分の足で物件を確認しながら選ぶようにしましょう。
ただ、地方物件の場合、購入費用が都心物件よりも抑えられるため、利回りが高くなる可能性もあります。利回りを重視して考えるなら、地方物件を選ぶほうがいいかもしれません。
建物構造はどれがよい
建物の構造には、「木造」「鉄筋造」「RC造」があります。RC造とは、鉄筋コンクリート造のことで、耐用年数が長くとれるといった特徴があります。
購入費用は木造よりも鉄筋造、鉄筋造よりもRC造の順に高くなるため、家賃と購入価格から得られる利回りを考慮しながら、購入する物件の構造を選ぶようにしましょう。
木造
木造は比較的安い値段で購入できる点がメリットですが、法定耐用年数が22年と短く、耐用年数を超えた物件は大規模修繕が必要です。
木造住宅を購入する場合は、残りの耐用年数がどのくらいなのかを確認したうえで購入するようにしましょう。
鉄筋造
鉄筋造は金属材を使った構造で、RC造よりも軽量である点が特徴です。耐用年数は金属材の厚さによって異なり、3㎜以下の場合は19年、3㎜超4㎜以下だと27年、4㎜超だと34年です。
RC造よりも耐用年数は少なくなりますが、購入価格を抑えられるため、築浅の物件ならお買い得といえるでしょう。
RC造
RC造は鉄筋コンクリート造のため、強度が高いという強みがあります。耐用年数も47年と長いため、修繕計画も余裕を持って立てられるでしょう。
ただ、物件価格が高いため、想定できる家賃収入から導きだせる利回りを意識して選ぶことが大切です。
不動産投資の概要を理解し、自分に合った投資方法を選ぼう
不動産投資にはさまざま種類があり、初期費用や家賃収入の規模が異なるほか、現物の不動産を保有して投資を行う方法とREITのように証券化したものを購入して運用する方法があります。
とくに現物の不動産を所有するにあたっては、購入費用はもちろんのこと、維持管理費用も考慮しなければなりません。それらを踏まえたうえで、最終的にどのくらいの利回りが得られるのかをシミュレーションし、自分に合った不動産投資の種類を選ぶようにしましょう。
また、現物の不動産を保有する場合は、最終的にその不動産をどうするのかといった出口戦略も考えておく必要があります。将来売却を考えているのなら、できるだけ物件の価値が下がらない立地や構造を選ぶことも忘れないようにしてください。