不動産投資をするなら、高利回りの物件を取得したいと考える人も多いでしょう。しかし、利回りが高い物件を取得したとしても、必ずしも不動産投資が成功にいたるとは限らないということをご存じでしょうか。この記事では不動産投資における利回りについて、基礎知識とともに、不動産投資における理想の利回りや利回りの賢い見方をご紹介します。
この記事の監修者
逆瀬川 勇造
不動産のプロ
大学卒業後、地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、 2011年9月より不動産会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。 2018年より独立・2020年合同会社7pocketsを設立し金融や不動産に関するコンテンツ作成に取り組む。 2級FP技能士(AFP)、宅建士
不動産投資における理想の利回りは?
不動産投資における理想の利回りは、5~10%といわれることが多いです。とはいえ、実際には、理想の利回りは1棟投資なのかワンルーム投資なのか、新築物件なのか中古物件なのか、また物件の立地が首都圏なのか各地方なのかなどによっても異なります。以下にて、首都圏の平均利回りと各地方の平均利回りを見てみましょう。
首都圏の平均利回り
首都圏の平均的な利回りはおよそ6%です。
利回りは取得価格に対する収入の割合です。
首都圏は、地方と比べると物件の取得費用が大きくなりやすいため、全体平均と比較すると低い利回りとなる傾向にあります。少子高齢化の進む日本でも、都心部では人口が増加しており、将来性が期待できます。低い利回りと将来性を比較して、どう判断するかが重要になるでしょう。もちろん、あくまでも平均利回りのため、実際には個別具体的に検討する必要があります。
各地方の平均利回り
各地方の平均的な利回りは10%~12%前後です。
地方は、首都圏と比べると物件の取得費用を抑えられるでしょう。首都圏ほどの高い家賃設定が見込めない可能性が高いですが、首都圏よりも利回りは高い傾向にあります。利回りが高い分、地方は今後も含め、人口が減少していく可能性が低いといった点を総合的に判断することが求められます。
不動産投資における利回りとは
利回りは投資金額に対する収入の割合です。
とくに注釈などなければ、1年間の利回りである「年間利回り」のことを指します。
また、不動産投資における利回りには、いくつかの種類があります。一般的に広告などで目にする利回りは「表面利回り」です。物件選びをする際には「実質利回り」を重視する必要があります。またそのほかにも、「想定利回り」、「現行利回り」もあります。それぞれの利回りの計算方法と意味についてご説明します。
表面利回り
表面利回りは、物件の持つ収益性を大まかに把握するために使われる指標で、以下の計算式で算出されます。別名、グロス利回りとも称されます。
表面利回り(%)=年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
表面利回りは収入から差し引く必要経費や税金について考慮がされていません。表面利回りは実態とのギャップがある可能性がある数値であることを知っておき、あくまでも大まかな物件の収益性をつかむ目安として考えておきましょう。
実質利回り
実質利回りは、物件選びの際に重要視される指標で、以下の計算式で算出されます。別名、ネット利回りとも称されます。
実質利回り(%)= 営業純利益(NOI)※ ÷ 物件価格 × 100
※営業純利益=年間家賃収入-必要経費
年間家賃収入(すべての部屋に入居者がいると仮定した時の収入額)から、必要経費(火災保険料、管理委託料、備品消耗品代、通信費、交際費、光熱費、借入金利子など)や税金などを差し引いた後の収益(NOI)を物件価格で割って算出します。
表面利回りと比べるとより実態に沿った利回りとなることから、実際に投資を検討する際には、より正確なデータに基づいた実質利回りを求めることが重要です。
想定利回りと現行利回り
一般的に利用される「表面利回り」と「実質利回り」以外にも、次のような利回りもあります。
【想定利回り】
不動産投資における想定利回りとは、正式には「満室想定利回り」のことを指します。
つまり、実際には空室が出る可能性があるものの、すべて入居者がいる状況を想定して利回りを算出するのです。
広告などに記載のある表面利回りはこの満室想定利回りである可能性が高い点に注意が必要です。
【現行利回り】
現行利回りは、現行の家賃収入から利回りを計算します。空室がある場合には、その部屋の家賃収入を含めないため、実績に基づいた指標と考えることができるでしょう。
実際に投資を検討する際は、購入予定の物件について、レントロールに基づき、どのくらいの空室があるのか、また家賃の高い部屋と家賃の低い部屋があるのか、またある場合はその理由は何なのかといった点まで含めて検討することが大切です。
物件ごとの利回り
利回りは、投資対象とする物件種類によっても異なります。区分マンションとアパートに分けて、物件ごとの平均的な利回りについてご説明します。
区分マンション
区分マンションの平均的な利回りは、3%~7%前後(表面利回り)です。
エリアにもよりますが、近年区分マンションの価格が高騰している傾向もあり、利回りは低下傾向にあります。
区分マンション投資は、物件購入時の初期費用を抑えながら、空室率の低い物件を取得できたり、高い家賃収入を見込めたりする可能性もあり、高利回りが狙えます。
ただし、区分マンション1室で投資をする場合、空室が生じると家賃収入はゼロとなります。空室が生じても不動産投資ローンの返済に加えて、管理費や大規模修繕のために積み立てる修繕積立金の負担が毎月生じる点にも注意が必要です。築古マンションの場合、管理費や修繕積立金の負担が大きく、平均的な利回りよりも低利回りとなるケースもあります。
区分マンション投資については以下の記事で詳しく解説をしています。
アパート1棟
アパート1棟投資の平均的な利回りは、5%~10%前後(表面利回り)です。
近年アパートやマンションの価格は高騰している傾向もありますが、利回りは横ばい傾向にあります。
アパート1棟投資が、区分マンション投資よりも利回りが、やや高い理由はスケールメリットにあります。つまり、一度の購入で複数戸を取得することができますので、複数戸からの家賃収入が見込めるのです。
一棟投資については以下の記事で詳しく解説をしています。
1棟保有のメリット
アパート1棟保有のメリットには以下のようなものが挙げられるでしょう。
・スケールメリットがある
・空室リスクを抑えることができる
・土地を保有できる
仮に区分マンションを2000万円で取得して家賃設定を8万円とした場合と1棟アパート(6戸)の家賃が1戸5万円だとした場合を比較してみると、表面利回りは以下のようになります。
区分マンション 96万円※ ÷ 2000万円 × 100 = 4.8%
※96万円=8万円×12か月
アパート1棟 360万円※ ÷ 6000万円 × 100 = 6%
※360万円=5万円×6戸×12か月
つまり、アパート1棟投資の場合、家賃設定が低くても初期費用が大きくても、スケールメリットによって、区分マンション1室で不動産投資を行うよりも利回りが高くなる可能性があるといえます。もちろん、エリアや築年数などの物件状況によっても異なるため、目安として考えておいてください。
また、1棟保有するだけで複数戸から家賃収入を得られるため、空室リスクを抑えることができます。さらに、1棟まるごと購入すると、土地と建物すべての所有権を取得することになります。このため、仮に将来建物が老朽化したとしても、土地という資産が手元に残ることになるのです。
高利回りのリスクと見極めるためのチェックポイント
利回りが高いに越したことはないものの、高利回りだからといって必ずしもよい物件であるとは限りません。
不動産を売りたい人は、基本的には投資や事業として取り組んでおり、少しでも高い価格で売却したいはずです。それにも関わらず、平均より高い利回りで売却したいということは、何らかの理由があることが多いのです。
たとえば、以下のようなことが考えられるでしょう。
・立地が悪く入居者が集まりにくい
・建物が老朽化しており修繕費用が高くなりやすい
もちろん、相場より利回りが高いよい物件が市場に出ることもありますが、物件の取得を考える際には、さまざまな視点からチェックして、リスクを見極めることが重要です。
利回りが低くてもおすすめ物件の特徴
利回りが低くても不動産投資の対象物件として優良な物件もあります。不動産投資は長期にわたる投資方法です。長期に渡り、不動産投資を続けていくためには安定的な家賃収入を得られる物件かどうかに注目する必要があります。また、いずれは不動産投資のバトンタッチを考える時期もくるので出口戦略の考えやすさも考慮しておく必要があります。利回りが低くても、そのようなポイントを満たす物件の特徴についてご説明します。
管理が行き届いている
築古の物件でも、日頃からの管理が行き届いている物件は入居者満足も高く、長年に渡って入居してもらえる可能性があります。また、退去した後も入居者が決まりやすいでしょう。もちろんオーナーチェンジした後も管理水準をキープする必要はありますが、家賃設定が低かったとしても、安定的な家賃収入を見込みやすいでしょう。
立地がいい
駅近物件や、生活利便施設や教育施設などが近隣にある物件など、立地のよい人気エリアは空室リスクが低くなります。物件価格は高い可能性がありますが、安定的な家賃収入を見込める可能性が高いでしょう。また、人気エリアであれば資産性も高いため、出口戦略を考えやすくなります。
資産性が高い
資産性が高い投資用不動産は、物件価格も高いため利回りが低い傾向にあります。しかし、資産性があるということは需要が高いため値崩れを起こしにくく、将来、出口戦略で投資用不動産の売却を視野に入れている場合にはおすすめです。家賃収入を得た後に、投資用不動産の売却を試みても買い手がつかないという事態を回避できる可能性が高まります。
築年数が浅い
築年数が浅いと、物件価格は高い可能性があるため利回りは低いといえます。しかし、トレンドにあった新しい設備が整っている場合、入居者から注目されやすいでしょう。将来、トレンドをおさえながら、設備の修繕や取り換え、変更なども必要となる可能性もありますが、高い入居率を継続していける可能性があります。
不動産投資はプロに相談しながら検討を進めよう
利回りの基礎を知ると、高利回りだから必ずしも不動産投資を成功に至らせる物件とは限らないという意味をご理解いただけるのではないでしょうか。しかし、実質利回りを重視して物件選びを行うといっても、どれくらいの初期費用や経費がかかるのか分からないから計算ができないという人も多いと思います。そのような場合には一人で考え込むのではなく、不動産投資のプロに相談しながら、主体的にみずからも投資物件の調査を行い、慎重に検討を進める姿勢を大切にしましょう。
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