REITってどんな商品?REITに投資する前に知っておきたいこと

投資先を検討する中で、REITに関心を抱いている人もいらっしゃるでしょう。しかし、REITについてあまり知識がなく、投資するのをためらっている方もいるかもしれません。

今回の記事ではREITと実物不動産投資の違いをはじめ、メリットやデメリット、REITの選び方のコツについて解説します。

この記事の監修者

キムラミキ

不動産投資のプロ

ファイナンシャルプランナー(AFP)宅地建物取引士 社会福祉士 キャリアコンサルタント 日本社会事業大学で社会福祉を学んだ後、外資系保険会社、マンションディベロッパーに在籍後、 FPとして独立。現在は、株式会社ラフデッサン 代表取締役として、個人向けライフプラン相談、 中小企業の顧問業務をお受けするほか、コラム執筆、セミナー講師、 山陰放送ラジオパーソナリティとしても活躍中。
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REITとは

REIT(Real Estate Investment Trust)とは、「不動産投資信託」のことを指します。投資信託の中でも、投資対象先に不動産が組み入れられているものだと考えるとわかりやすいかもしれません。もともとは1960年代にアメリカで生まれた仕組みであり、日本ではJapanの頭文字をつけて「J-REIT」と呼ばれています。

REITでは、投資家から集めた資金をもとに商業施設やオフィスビル、マンションなどの不動産を購入し、投資のプロが運用を行うのが特徴です。また、そこから得られた賃料収入や不動産の譲渡益は各投資家へ分配されます。投資家はREITを通じてさまざまな不動産に分散投資できるほか、不動産運用の成果として利益を得ることができるでしょう。

なお、REIT市場は各国にある一方で細かな仕組みはそれぞれ異なります。日本では各国REITの個別銘柄を購入できないといった法的制約があるため、海外REITを含む投資信託やETFを購入するケースが一般的です。

REITと実物不動産投資との違い

ここでは、REITと実物不動産投資の違いについて解説します。

実物不動産投資については、以下の記事で詳しく解説をしています。

区分マンション投資は割に合わない?成功のポイントを解説します

2023.10.12

利回り

REITの利回りは銘柄によって異なります。想定利回りは低いもので2%、高いもので5%前後と自分の運用方針に応じた商品を選択することができるでしょう。

 一方で、実物不動産投資も運用する物件によって利回りに違いがあり、築年数や立地条件によって左右されます。一般的に中古物件や立地条件があまりよくない物件では表面利回りが15%以上となるケースも見受けられる一方、諸条件にこだわって表面利回りが5%前後になることもあるでしょう。不動産投資に比べると、REITの方が利回りの幅は狭いといえます。

換金の自由度

REITは取引所に上場していることから、実物不動産と比較して売買しやすいのがメリットです。売買価格がリアルタイムで把握でき、現状の利益や損失を都度確認できるでしょう。ただし、流動性が高い一方で、REIT自体に悪材料がなくとも影響力のある機関投資家によって一時的に高値で売られてしまう恐れがある点には注意が必要です。

また、実物不動産投資はREITに比べ、換金の自由度が低い(流動性が低い)ことがデメリットとして挙げられます。実物不動産では、売り出しから資金決済までに1ヶ月以上かかるケースも多く、場合によっては半年から1年程度かかってしまうこともあるでしょう。また、実物不動産の多くは相対取引であり、基本的には市場に則っている一方で、売買価格や諸条件は個別要素で決まるケースも多く見受けられます。

節税対策の幅

REITは配当所得・売却益ともに分離課税となっており、所得税と住民税、復興所得税をあわせて20.315%が課税されます。なお、配当所得は本来「総合課税」として扱われますが、証券会社で特定口座を開設する際に「源泉徴収あり」を選択することで源泉課税にできます。また、NISA制度を利用することで利益にかかる税金が非課税になるため、まだ利用していない方はあわせて検討してみるのもよいでしょう。

実物不動産投資の場合には、賃料収入等の不動産所得は総合課税、売却益については分離課税(個人の場合)に該当します。不動産所得は他の所得と合算し、所得が高くなればなるほど税率も加算される点に注意が必要です。売却益に対して課される譲渡税は、短期譲渡(所有期間5年以下)の場合で約39%、長期譲渡(所有期間5年超)の場合は約20%となっています。そのため、REITと比較して実物不動産の方が税率が高めになりやすいといえるでしょう。

ただし、実物不動産投資の場合には法人化するなどといった手段を講じることにより、所得税の節税が可能です。相続税対策として活用することもできるため、実物不動産投資の方が節税対策の幅は広いといえます。

価格変動のリスクヘッジ

REITは少額から投資できるため、分散投資によるリスクヘッジが可能です。ただし、売買の容易さと資産流動性が高い一方、短期間で大きな値動きを起こす可能性がある点に注意しなければなりません。そのため、実物不動産投資に比べると、価格変動の度合いが高いといえるでしょう。

実物不動産投資は複数物件を所有する、サブリースを活用するなどの手段     によって空室     リスク     などのリスクヘッジを図ることができますが、実際はそう簡単にはいかないケースも少なくありません。また、実物不動産投資には税金面での負担も重くなるため、その辺りの負担感も前もって調べておくことが大切です。

不動産投資のリスクについては、以下の記事で詳しく解説をしています。

不動産投資で生じる5大リスクとは?リスクを下げる手法を徹底解説

2022.02.17

選択肢

REITであれば個人では取得が難しいオフィスビルや商業施設はもちろん、一棟マンションや一戸建てなどさまざまな物件に対して投資できます。REITによって運用不動産の選び方は異なるものの、商品数が豊富であることから自分のニーズに見合った商品を見つけやすいでしょう。

一方で実物不動産投資の場合、投資対象の多くはアパートやマンションといった住居系の不動産になるでしょう。中にはトランクルームや駐車場、シェアハウスといった物件を投資目的に所有するケースもあるかもしれませんが、全体から見れば少数です。

運用の手間

REITでは不動産を自身で運用せず、プロに一任することができます。そのため、所有しているだけで年1~2回の配当金を受け取れる可能性があるほか、価格が上昇したタイミングで売却することで利益を得られるでしょう。

     一方で、実物不動産投資はただ所有しているだけでは何も利益を得られません。第三者に貸し出し、賃貸契約を締結して初めて、家賃収入を得ることができます。

REITのメリット

REITのメリットは、主に以下の通りです。

安定した利回りを期待できる

REITの分配金の主な資金は賃料であることから、入居者等がいる限り安定して収入を得ることが可能です。また、ほかの金融商品と比べると、REITには高い配当利回りを設定している商品が多く見受けられます。過去の運用実績も公開されていることから、納得したうえで商品を選べる点も魅力です。

少額から始めることができる

REITでは、不動産を運用する企業を通して間接的に投資を行うため、少額から始められるのが利点です。不動産投資となると、初期費用にまとまった資金が必要であり、なかなか始める際のハードルが高いと考える人も少なくありません。このように、初期費用を理由に不動産投資を見送っていた人にとって、REITはチャレンジしやすい投資といえるでしょう。

管理の手間が少ない

REITは自分で運用するのではなく、プロが管理・運用を行います。そのため、運営状況などを定期的にチェックする必要はあるものの、株式投資のように常に相場を確認する手間は省けるでしょう。また、投資後に物件の維持や管理などをする必要もありません。不動産の現物投資では、修繕費や入居者との契約など多くの負担が生じます。REITでは、それらをプロに一任できるため、不動産管理の時間が確保できない人や運用のノウハウが浅い初心者にもおすすめです。

REITのデメリット

REITにはメリットがある一方で、下記のようなデメリットも存在します。

REITには「配当控除」が適用されない

REITで受け取った分配金は、上場株式や投資信託と同様に配当所得に該当します。通常であれば総合課税の配当所得として確定申告をした際に配当控除の対象となりますが、REITではそれが適用されません。そのため、配当控除による税額軽減の効果を受けられないのがデメリットです。

不動産投資の税金については、以下で詳しく解説をしています。

不労所得の税金はいくらかかる?種類や計算方法・節税の仕方について徹底解説

2023.06.09

相場が暴落する可能性がある

REITは投資商品のひとつであるため、元本保証がされているわけではありません。そのため、相場が暴落する恐れがある点も理解しておくことが必要です。相場は金融・不動産市況に左右されやすいことはもちろん、需要と供給によっても価格が変動します。また、投資した不動産が地震や台風などの災害を受けるリスクもあることから、高い利回りである点だけ     に注目して安易に購入してしまうのは避けた方が無難です。

REITのリスクにおいては、商品を購入する前に目論見書や有価証券報告書についてしっかり目を通すことが大切です。リスクを理解した上で、投資判断を下すようにしましょう。

投資法人が倒産したり上場廃止する可能性がある

REITは倒産隔離(※)の対象ではありません。そのため、収益低下が続いた場合には一般の企業と同様に投資法人が倒産する恐れがあります。また、投資法人が証券取引所の上場廃止基準に該当した場合、上場廃止となって取引が終了することがあるため注意が必要です。

とはいえ、仮に経営破綻した場合であっても、保有している不動産の価値がゼロになるわけではなく、不動産を売却することで、投資金額の一部または全額が戻る可能性があります。

(※)企業が倒産しても、その企業が保有している資産に影響を与えないようリスク回避をしておくこと

REITの始め方

REITを始めるための主な流れは以下の通りです。

  1. 証券会社を決める
  2. 証券会社で口座を開設する
  3. 証券会社に資金を入金し、REITを購入する

それぞれについて、見ていきましょう。

証券会社を決める

証券会社に口座を開設する前に、どこの証券会社を利用するかを決める必要があります。証券会社によって取引手数料等が異なることから、複数の証券会社を比較検討したうえで決めるとよいでしょう。

証券会社で口座を開設する

口座を開設する証券会社を決めたら、必要書類を記入し提出します。必要書類は証券会社によって異なるものの、一般的には本人確認書類が必要となります。マイナンバーカードや運転免許証、パスポートなど、本人が確認できる書類を前もって用意しておくとスムーズです。

証券会社に資金を入金し、REITを購入する

無事に口座が開設できたら、銀行の口座から証券会社の口座へと資金を入金し、実際にREITを購入してみましょう。銘柄によって初期投資額は異なりますが、10万円前後の比較的手     が出しやすい銘柄もあれば、100万円以上する銘柄もあります。自分のリスク許容度を踏まえた上で、まずは手頃な価格の銘柄から始めるとよいでしょう。

REITの選び方のコツ

ここでは、REITを購入する際に意識したいポイントについて、3つ取り上げてみました。

国内か海外かで選ぶ

REITを購入する際、国内か海外かで悩む人も多いのではないでしょうか。海外のREITであれば、銘柄数が多いため、自分に合う商品が見つかりやすいのが特徴です。一方で、国内のREITであれば情報収集しやすく、より安心して購入できるのがメリットとなります。投資の目的や目標を考慮したうえで、適切な商品を選ぶようにしましょう。

利回りの高さで選ぶ

REITに投資するなら、利回りの高さを選ぶのも大切です。高い利回りに設定してある商品に投資することで、効率良く資産を増やせます。ただし、リスクが高い物件ほど高利回りである傾向があるため、選ぶ際     に利回りはもちろんですが、他の情報にもしっかりと目を通すことも忘れないようにしましょう。

信託報酬が低いものを選ぶ

REITには、REIT単体を売買する方法と、複数の商品をまとめて投資が行えるREITファンドへ投資する方法があります。REITファンドへ投資する際は、運用や管理の手数料として「信託報酬」が生じる点に注意が必要です。より多くの利益を手元に残すためにも、信託報酬が低いものを選ぶようにしましょう。

不動産投資初心者にはREITがおすすめ

今回の記事ではREITの概要と、実物不動産投資との違いやメリット・デメリットについてお伝えしました。REITは実物不動産投資に比べて少額で投資を始められることに加え、自分で管理する手間がかからない点がメリットといえます。そのため、日中何かと忙しいビジネスパーソンや主婦の方であっても取り組みやすいでしょう。

一方で、REITは短期間での値動きが激しいほか、投資先の法人が倒産したり上場廃止したりするリスクがある点に注意が必要です。REITと実物不動産投資の違いを踏まえた上で、自分の投資ニーズに見合った方を選択することをおすすめします。

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この記事を書いた人

織瀬ゆり

元信託銀行員。AFP・2級FP技能士をはじめ、複数の金融・不動産資格を所持。 それらの知識をもとに、「初心者にもわかりやすい執筆」を心がけている。 2児の子育て中でもあり、子育て世帯向けの資産形成、女性向けのライフプラン記事を得意とする。

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