投資の基本とも言われる「長期投資」。長期投資をすることで、収益の安定化や複利効果の活用など、さまざまなメリットがあります。加えて、短期投資と比べて精神的な負担も少ないため、株式投資初心者におすすめの投資手法といえるでしょう。今回は長期投資のメリット・デメリットや銘柄選びのポイントなどを解説します。
この記事の監修者
柳川 郁弥
金融のプロ
保有資格:1級FP技能士 / CFP認定者
1989年、兵庫県生まれ。2014年CFP資格取得を機にFP事務所、保険代理店、金融商品仲介
業での実務を経て、現在は、独立系のFPとして、関西圏の大学を中心に「FP資格取得講座
」や「証券外務員講座」など年間約150回登壇。
その他、企業の従業員や一般の個人向けに生活設計や資産運用に関する相談業務、金融記
事を中心とした執筆活動を行っている。
所属:有限責任事業組合 FPファクトリー
https://fp-factory.jp/?page_id=359
長期投資とは?株式投資初心者におすすめと言われる理由
長期投資とは、一般的に数年から数十年という長期間にわたって同じ金融商品を保有し続ける投資手法です。ただし、「〇年以上、保有するのが長期投資」という決まりや定義があるわけではなく、「数年から数十年」というのはあくまで一般的によく言われる期間になります。
長期投資と短期投資の違い
短期投資とは、一般的に1日から数週間程度の短期間で金融商品の売買を完結させる投資手法です。短期投資は投資期間により、数秒から数分程度の短時間で細かく売買を繰り返して利益を積み重ねる「スキャルピング(超短期投資)」、1日の間で売買をして利益を確定させる「デイトレード」、数日から数週間で売買を完結させる「スイングトレード」の3種類に大別されます。このように、長期投資と短期投資は金融商品を保有している期間が異なります。
また、原則的に長期投資も短期投資も「安く買って高く売ること」を目的に売買することに違いはありません。しかし、その目的を達成するために参考にする投資判断の材料が大きく異なります。
短期投資は安く買って高く売るために、人間の心理やテクニカル指標の分析、経済指標の結果などを一刻で把握し、売買を行います。一方、長期投資は人間の心理や経済指標などよりも、現在と比較して今後その企業がどれくらい成長していくのか、収益が拡大するのかという、企業の将来性を分析して売買を実行するのが王道です。逆に短期投資において、企業の将来性はほとんど考慮されないといっても良いでしょう。
その他、短期投資の際に用いられる信用取引の手法で、証券会社から株式を借りて、株価が高いときに売り(空売り)、安くなった水準で買戻して借りた株式を返却することで、株価が下落する局面でも利益を出す手法があります。
このように長期投資と短期投資は、投資期間の他、売買行動を起こす際に参考にする投資判断の材料が異なるのです。
長期投資はなぜ株式投資初心者におすすめ?
短期投資と比較して長期投資は、株式投資初心者に向いている投資手法です。
まず、長期投資は短期投資と比べて、収益が安定する傾向があります。一般社団法人投資信託協会では、「過去60年間における東証一部(現:プライム市場)上場銘柄全体の年平均収益率を投資期間別に集計すると、長期になるほど収益率の開きが縮まり、収益が安定化していること」を示すデータを掲示しています。
同データを参考にすると、投資期間が短いと利益額・損失額の振れ幅が大きいものの、投資期間が長くなればなるほど利益額・損失額の振れ幅が小さくなり、安定的に利益を積み重ねられる可能性が高いということが読み取れるでしょう。
<長期投資ではどれくらい収益が安定するの?>投資信託協会のデータでは、1年投資の平均収益率は最高+72.1%・最低-40.6%と112.7%の開きがあるのに対し、10年投資では最高+22.8%・最低-6.8%(開きは29.6%)となり、20年投資は最高20.5%・最低-4.7%(開き25.2%)、40年投資では最高+10.4%・最低+4.6%と開きは5.8%にまで縮まることが示されています。 参考:収益が安定する|一般社団法人投資信託協会 |
短期投資では、場合によっては1分1秒の値動きを捉えて売買を行う必要があるため、初心者にとっては精神的な負担を感じる場面が少なくありません。
一方、長期投資は20年後や30年後といった未来のゴールを見据えて、主に企業の将来性を重視して売買を行います。企業の将来性に関わる情報(※1)を適宜チェックしておけば、数十分おきにスマートフォンやパソコンを見て値動きを追いかける必要はありません。そのため、長期投資は初心者にとって精神的な負担が抑えられるのです。
(※1 企業の将来性に関わる情報)企業の将来性に関わる情報とは、主に四半期ごとに発表される決算情報です。長期投資では3か月に一度の決算発表における売上、各種利益の進捗や事業計画などを踏まえて、自分が思い描く企業の将来性に問題が出ていないかチェックすることが大切です。 |
短期投資と比較した際の長期投資の5つのメリット
続いて、長期投資を行うメリットを5つ解説していきます。
安定的な収益を得られる可能性が高い
長期投資はなぜ株式投資初心者におすすめ?でも触れた通り、一般社団法人投資信託協会では、過去60年間の東証一部(現:プライム市場)上場銘柄全体の年平均収益率を投資期間別に集計し、投資期間が長期になるほど収益率の開きが縮まり、収益が安定化していることをデータで指し示しています。安定した収益を得られる可能性が高い点は、短期投資にはない長期投資の大きなメリットといえるでしょう。
複利効果を得られる
複利効果とは、運用で得られた利益を再投資することで投資元本を増やし、雪だるま式でより多くの利益を得られる効果のことです(※一方で、収益を再投資せずに投資元本部分に対してのみ利益がつくことを「単利」という)。
長期期間が長ければ長いほど、複利効果の恩恵をより多く享受することができます。以下、投資元本100万円+年利回り5%のケースで、投資期間別の単利・複利の投資資産(投資元本+投資成果)を下記の表にしてみました。
投資期間 | 単利 | 複利 |
1年 | 105万円 | 105万円 |
5年 | 125万円 | 127万6,282円 |
10年 | 150万円 | 162万8,895円 |
15年 | 175万円 | 207万8,928円 |
20年 | 200万円 | 265万3,298円 |
25年 | 225万円 | 338万6,355円 |
30年 | 250万円 | 432万1,942円 |
35年 | 275万円 | 551万6,015円 |
上記の通り、仮に35年間長期投資をした場合は、両者に240万円以上の差がついていることがわかります。複利効果の享受は長期投資の最大の魅力といえるでしょう。
短期的な値動きに一喜一憂する必要がない
長期投資はなぜ株式投資初心者におすすめ?でも述べたように、長期投資は短期的な値動きを一喜一憂する必要がありません。株価チェックはリーマンショックのような世界的な経済危機や企業の倒産危機などの特別なニュースが出ない限り、週に1度程度行えば十分でしょう。
取引コストを抑えられる
短期間で売買を繰り返す短期投資と異なり、長期間にわたって株式を保有し続ける長期投資は売買の回数が少なくなります。そのため、長期投資は売買の度に発生する取引手数料を抑えることが可能です。
また、長期投資は、広義の取引コストとして、投資にかける時間も含まれます。投資後は刻一刻と値動きを見る必要がないので、短期投資と比較して投資にかける時間を大きく抑えられます。
このように長期投資は、取引手数料という金銭、投資にかける時間という時間の両面で取引コストを抑えることができるのです。
銘柄によっては株主優待の恩恵を受けられる
株主優待とは、企業が株主に対してオリジナル商品や各種割引券、食品などをプレゼントする制度のことです。銘柄によっては株主優待があり、保有株数や保有年数によってプレゼントの内容は異なります。
株主優待の贈呈回数は企業によって異なりますが、いずれにせよ長期投資をすることで株主優待をより多くもらえることになるのです。加えて、銘柄によっては保有期間に応じて株主優待の内容がグレードアップするケースもあります。このように長期投資を選ぶことで、株主優待の恩恵をより多く受けることができるでしょう。
損する可能性もある!長期投資のデメリットについて
長期投資にはさまざまなメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。ここでは、長期投資のデメリットについても見ていきましょう。
元本割れの可能性もある
長期投資のメリットとして、安定的な収益を得られる可能性が高いことを挙げました。ただ、長期投資も投資である以上、当然元本割れをする可能性はあります。必ずしも「長期投資=資産運用が成功する」というわけではないのです。
元本割れのリスクを抑えるためには、長期投資に加えて、積立投資や分散投資の併用が効果的です。
- 積立投資:同じ金額・同じタイミングで、同じ金融商品を購入し続ける投資手法
- 分散投資:複数の金融商品を保有する投資手法
投資の王道「長期・積立・分散投資」を行い、元本割れのリスクを抑えた資産運用も検討してみましょう。
利益が確定するまで時間がかかる
長期投資は、「長期間銘柄を保有し続ける=長期間株式を売却しない」という投資スタイルの特性上、利益を確定するまで時間を要してしまいます。そのため、「短時間でお金を稼ぎたい」「しばらく売買できないのに抵抗ある」という考えを持っている方は、長期投資との相性が合わないでしょう。
たとえば、仮に20年間銘柄を保有し続けるということは、20年間はその銘柄を売って現金化しないことを意味します。そのため、短期投資と比べて長期投資は金銭的な余裕も求められます(※そもそも投資は当面使用する予定のない余裕資金で行うのが前提)。
銘柄の売却は市場が開いていればいつでもできるため、長期投資をしようと思ったが現金が必要になり、買った翌日に売却することも可能ではあります。しかし、それでは当初の目的である長期投資ができません。
このように長期投資は利益を確定して現金化するまでに時間がかかるからこそ、さまざまなデメリットが生じ得る可能性があるのです。
失敗するリスクを抑えよう!長期投資に適した銘柄選びのポイント
最後に、長期投資に適した銘柄選びのポイントを解説します。
事業内容を理解できる銘柄かどうか
長期投資では主に企業の将来性に期待して銘柄を選びますが、企業の将来性を予想するためには、前提として企業の事業内容を理解しなければなりません。投資の神様とも呼ばれるウォーレン・バフェット氏も「事業内容が理解できないものには投資しない」と発言しています。
事業内容を理解するためには、相応の業界知識と経験が必要です。長期投資をする際には最低限、強みのある商品とサービスをどの顧客へどう展開して、どのように利益を上げているのかといった事業内容を理解できる銘柄を選ぶようにしましょう。
今後の成長が見込める銘柄(グロース株)かどうか
長期投資では企業の将来性、言い換えると今後の成長が見込まれる銘柄(グロース株)に投資を行うことで、中長期的な株価の上昇が期待できます。そのため、企業の成長性を見極めることが大切です。
<もう1つの長期投資の手法>長期投資には、割安銘柄(バリュー株)に投資をする手法もあります。割安銘柄は、業績や企業の価値と比較して相対的に割安な価格で取引されている銘柄のことを指し、一時的に株価が低迷していたり、低水準で推移している銘柄をいいます。 また、将来、企業が評価された際には株価の値上がりが期待できますが、成長銘柄(グロース株)と異なり、成長が期待されている銘柄ではありません。企業の成長性と将来性という面において、より長期投資に適しているのは成長銘柄(グロース株)でしょう。 |
今後の成長が見込める銘柄かどうか、「売上や利益が過去数年さかのぼって上昇しているか」「成長性の高い事業を展開しているか」「他社には真似できない技術を持っているか」「業界の市場規模は拡大しそうか」などを踏まえて判断してみましょう。
元本割れリスクを抑える工夫をして、長期投資を始めよう!
長期投資は、精神的な負荷が少なく、かつ収益も安定する傾向があるため、株式投資初心者にもおすすめの投資手法です。一方で、「長期投資=必ず利益が出る」わけではありません。長期投資に適した銘柄を選んだうえで、積立・分散投資も併用して元本割れリスクを抑えることが大切です。
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